走行中にEVへ給電できる未来の道路、その技術開発が進むなか、従来より大幅に低コストで導入可能な方式が開発されました。果たして優位性はあるのでしょうか。
コイルを舗装内に埋め込まないで「貼るだけ」
東亜道路工業は2026年10月27日、東京都の実証実験として行っている「非接触給電舗装」のデモンストレーションを東京・海の森公園で行いました。
道路で「走りながらEVへ給電する」技術開発は国内外で進められています。「DWPT(Dynamic wireless Power Transfar)」という名称のほか、「電化道路」や「充電道路」などとも呼ばれます。
これは、携帯電話の「置くだけ給電」と同じような仕組みで、EV下部に設置した受電コイルと道路との間に磁界などが発生することで、接触しなくてもEVが充電できる技術です。すでに公道を使った実証実験も行われいるほか、NEXCO東日本も高速道路での実装を目指して開発を進めています。
今回、東亜道路工業は東京理科大学の居村岳広教授のチームとともに、世界初だという方式を開発しました。それは、薄層パネル型送電コイルを用いた「路面設置型」、つまり舗装内にコイルを埋め込まない方式です。舗装を剥がして施工する手間もなく、車両への伝送距離も短くなるといいます。
海の森公園の駐車場には、このパネル型送電コイルを9枚、連続的に設置した15mの充電道路がありました。舗装上のパネル型コイルは接着用樹脂で貼り付け、FRPでカバーして所定の耐久性を確保しているとのこと。
今回は駐車場のため、送電機器のボックスやケーブルはコイルの横に埋め込んでいるものの。路肩に設置すれば舗装を剥がさずに施工でき、これによりコストが大幅に下がるといいます。
居村教授は以前、自動車技術会への寄稿で高速道路への導入コストを「1kmあたり3.59億円」「コイル設計を見直すと2.84億円も可能」「次世代のコイル埋設方法とコイル自体の改良のインパクトを考慮すると1億円以下も視野」に入るなどと試算しています。
1kmあたり3.59億円の場合は東京~大阪間約500kmで単純計算で1795億円ということになりますが、東亜道路工業の阿部長門さんは今回の方式について、舗装に埋め込む方式と比較してコストが「4割で済む」と力説しました。
「急速充電のほうがよくない?」
今回は、速度12km/hのいわゆるゴルフカートを実証車両とし、そのスピードに最適化したうえで充電量としては、「走ったぶんだけ入る」程度とのことです。なお、手動運転よりも自動運転のほうが充電のロスが少ないという結果も得られています。
通常の速度にも対応できるかは「お金の問題が大きい」(居村教授)。よりお金をかけていい材料を使えば、100km/hでも制御は可能だといいます。
たとえば駅前ロータリーなどに設置し、EVタクシーやEVバスへ運行中に充電することで、営業距離を少しでも延ばすといった方法が考えられると東亜道路工業の阿部さんは話します。次のステップとしては、その実証を実際に行い、バスやタクシーなどの事業者の協力をもとにアンケートも含めて聞くことが考えられるといいます。
ただ、この技術の社会実装には、道路側の法令改正や警察、車両メーカー、運行事業者などの協力、そしてなによりもEVの普及が必須です。実現のハードルはかなり高いと言わざるを得ません。その間に通常のケーブルを介した急速充電器の性能もどんどんアップしていくことも予想されますが、「急速充電器と(路面での給電)が併用されることが望ましい」(阿部さん)といいます。
居村教授は「いつかは、走れば勝手にEVが充電される時代が来る」と話します。その社会を実現するため、世界中でイニシアチブを握るための開発競争となっているようです。今回の低コストで施工可能な方法がどれだけ受け入れられるか、注目です。