ドイツの商用車メーカーMANが、1回の充電で最大720kmを走れるとする新型大型電動トラック「eTGX」を発表しました。近距離輸送のイメージが強い電動トラックですが、新型車は長距離輸送への投入を見据えた性能を掲げています。
電池7個で最大720kmを走行可能に
ドイツ・ハノーファーで2026年9月に開催された商用車見本市「IAA Transportation 2026」で、MAN Truck & Busは新型「eTGX」を世界初公開しました。MANはフォルクスワーゲングループ傘下の商用車メーカーで、eTGXは長距離輸送向けに開発された大型電動トラックです。
新型eTGXのうち、前後2軸の標準的な「4×2」仕様は、6個の電池パックを搭載します。総電池容量は552kWhで、最大航続距離は660kmに達します。
さらに、今後追加される3軸の「6×2-4」仕様では、キャブの後方に7個目の電池パックを搭載します。これにより、総電池容量は644kWhとなり、最大航続距離は720kmに延びます。
東京―大阪間の道路距離はおおむね500km前後です。公称航続距離を単純に比較すれば、東京から大阪まで無充電で走行できる水準といえます。ただし、これは実際に東京―大阪間を走行して実証された数値ではありません。
航続距離が延びた理由は、単に搭載する電池の数を増やしたことだけではありません。新世代の電池パックは、従来型とほぼ同じ大きさ・重量を維持しながら、車両が利用できる電力量を最大約10%増加させています。
さらに、キャブ前部を120mm延長することで空気抵抗を低減。減速時にモーターで発電し、電気エネルギーを回収する「回生ブレーキ」の性能も最大20%向上させました。これらの改良により、車両全体のエネルギー効率は従来型に比べて最大3%改善しています。モーターの最高出力は440kW(598馬力)です。
30分の休憩中に電池を回復
もっとも、最大720kmという航続距離は、どのような条件でも実現できるわけではありません。MANが示した算定条件は、外気温20度、全区間を高速道路で走行、積載率60%、新品の電池、転がり抵抗性能が最高区分のタイヤの使用などです。
また、補機類に動力を供給するPTOを使用せず、電池容量の95%を利用することも前提となっています。
実際の航続距離は、気温や積載量、冷暖房の使用状況などによって変化します。MANは、6×2-4仕様を日常的な長距離輸送に使用した場合、現実的な航続距離は600kmを超えると説明しています。
一方、途中で充電する場合も、停車時間の短縮が期待できます。新型eTGXでは、オプションの「MCS(メガワット充電システム)」対応充電口を選択すると、最大750kWでの充電が可能です。対応する充電器を使用すれば、電池残量20%から80%まで約30分で充電できます。
運転手の休憩中に充電できれば、充電のためだけに長時間停車する必要がなくなります。ただし、これを実現するには、高速道路の休憩施設や物流拠点に、大型トラックが利用できる大出力充電器を整備する必要があります。こうした性能を商業運行で生かすには、車両の開発だけでなく、充電インフラの整備も欠かせません。
新型eTGXは2027年4月に販売を開始し、同年夏から量産される予定です。一方、MANの公式販売国一覧に日本は含まれておらず、今回の発表でも日本への導入については言及されていません。国内で新型eTGXが走るようになるかは、現時点では不透明です。
それでも、大手トラックメーカーが最大720kmの航続距離と約30分の急速充電を掲げ、長距離輸送に対応する大型電動トラックの量産を計画していることは注目に値します。こうした性能が実際の物流現場でも実用的だと確認されれば、他メーカーの開発や競争も加速する可能性があります。
充電設備や運行計画などの課題は残るものの、将来的には電動大型トラックが都市内配送だけでなく、都市間の長距離輸送も担うようになるかもしれません。