政府が「防衛」に関連するインフラ整備の方針を示しました。「民生ニーズが乏しくても、防衛上、重要ならば」という考え方が生まれつつあります。
防衛省の強いニーズにも対応
政府は2026年9月17日、「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」を開催。いわゆる安全保障関連3文書の改定に向けて政府横断的な取り組みを話し合いました。このなかで「有事」を考慮した空港、港湾、道路といった公共インフラの整備についても方針を示しました。
ひとつは「もしも」の事態に備え、普段は民間が主として利用する空港や港湾を、自衛隊や海上保安庁がスムーズに使える「特定利用空港・港湾」について、その整備を今後さらに拡充する方針です。
指定された施設では、管理者との間で「円滑な利用に関する枠組み」が設けられます。これにより、従来は利用が難しかった空港で自衛隊が離着陸訓練を行ったり、港湾でより実践的な訓練を実施したりすることが可能になっています。
また、こうした施設へのアクセスを向上させるための道路ネットワーク整備も併せて進められており、2026年度予算では空港整備に532億円、港湾に534億円、道路に1184億円が計上されています。
政府は引き続き「特定利用空港・港湾」の数を増やすほか、対象を道路以外のインフラにも広げることを検討しています。さらに特筆すべきは、「民生ニーズが乏しいものの、特に防衛省の強いニーズがある整備については、必要に応じ、在り方を検討」するとしている点です。
従来のように民生のインフラを整備し、可能であれば防衛省や自衛隊がそれを使わせてもらう形ではなく、民生上はそれほどニーズがなくても防衛上、重要であれば積極的に整備するという発想の転換は、出席した委員からも評価する声がありました。
また、山崎幸二元統幕長は「道路以外のインフラ」について、鉄道による陸海空の輸送網の構築といった「鉄道の重要性」を三文書へ新たに加えていくことを提言しました。ちなみに、ウクライナではきめ細かな鉄道ネットワークが軍民双方で生命線となり、重要性が再認識されています。
今年6月、自民党の安全保障調査会はウクライナ戦などの動向を踏まえ、新たな国家安全保障戦略に向けた提言をまとめています。そこでは「平時から『有事があり得ることを前提』とした社会・産業構造の強靱化を進める必要がある」とし、継戦能力の確保を主眼として民間の輸送力を活用した連携や公共インフラの活用を強く打ち出しました。この方向性がより具体的に、かつ対象が拡大しつつあります。