英国陸軍の次期車両候補「ランクル」に強大なライバル登場!? 「ベンツ」と「ラインメタル」が構想する戦場の“狼”とは?

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ランドローバーの退役を始めたイギリス軍。その後継候補には、ランドクルーザーをベースとする車両だけでなく、メルセデス・ベンツのGクラスも挙がっています。ドイツの車両技術を使いながら、イギリス国内で仕上げる提案とは。

ランクルも候補の後継争いに、メルセデスが参戦

 イギリス陸軍の御用達の軍用オフロードといえば、伝統的にランドローバーでしたが、後継車両に関しては同車両ではない可能性があります。その候補のひとつになんとドイツに由来した車両が名乗りを上げていたのです。防衛企業ラインメタルとメルセデス・ベンツの両社イギリス法人は2026年9月16日、「Team Wolf(チーム・ウルフ)」という協力体制を確立し、メルセデス・ベンツのGクラスをベースとして軍用車を開発することになりました。

メルセデスの車両技術と、ラインメタルの軍用装備を組み込む技術を組み合わせることを計画しています。

 イギリスは現在、軍用車両の更新事業「Land Mobility Programme(LMP)」を進めています。その対象には、イギリス製オフロード車の代名詞ともいえるランドローバーの後継車両も含まれます。

 ランドローバーは1950年代から軍用車両として広く使われ、パトロールや連絡、人員・装備の輸送などを担ってきました。イギリス国防省によると、2025年時点でも軍全体で5000台以上が使用されていました。

 しかし、老朽化が進み、イギリス軍は2026年3月から段階的な退役を開始しました。後継となる新型軽車両は、2030年までに最初の車両が部隊へ届く見込みです。以降は旧式のランドローバーと新型車両の段階的な更新が進むと思われます。

 後継争いには、日本でもおなじみのトヨタ「ランドクルーザー」を使った提案もあります。イギリスの防衛企業バブコックは、ランドクルーザー70系をベースとする「GLV(汎用兵站車両)」を開発し、スパキャットと協力して提案しています。ランドローバー自身も新型ディフェンダーの軍用仕様で名乗りを上げており、後継車両の選定はこれからです。

 チーム・ウルフの共通基盤となるのは、救助・特殊任務向けに開発されたメルセデス・ベンツGクラスの「W464」です。日本では高級SUVの印象が強いGクラスですが、今回使われるのは、厳しい環境での業務や特殊な用途を想定した車両です。チーム・ウルフは、この車台をベースに用途の異なる車両をそろえた「ウルフ・パック」を提案しています。

 ウルフ・パックには、空挺部隊や特殊部隊向けに開発された「カラカル」、イギリス陸軍向け軽戦術車両として提案されている「シャドー・ウルフ」、そして2026年9月に公開された「ティンバー・ウルフ」と「シルバー・ウルフ」が含まれます。カラカルはドイツ軍とオランダ軍が共同調達を進めているほか、ウクライナ特殊部隊では2024年から使用されています。

 ウルフ・パック全体では、指揮、救急、兵員輸送、補給、特殊任務など、幅広い用途への対応を想定しています。共通の車台やシステム、接続規格を採用し、教育や整備、長期的な運用支援の負担を減らす構想です。ラインメタルとメルセデス・ベンツは、1種類の車両ですべてを賄うのではなく、共通基盤から複数の用途に対応する戦術車両ファミリーとして売り込んでいます。

ドイツ車を買うのに、なぜイギリスで仕上げる?

 チーム・ウルフの特徴は、たんなる軍用車両としての性能だけではありません。導入においてイギリス国内の産業も関わることで、経済的なメリットや雇用にも繋がります。

 両社は、テルフォードにあるRBSL(ラインメタル・BAEシステムズ・ランド)の施設を車両統合センターとし、システムの組み込みや試験、検証を行う方針です。ここは、すでにイギリス軍向け装輪装甲車「ボクサー」の製造を担う拠点でもあります。

 軍用車は、車両本体だけで任務をこなせるわけではありません。無線機や任務に応じた装備などを組み込み、車両全体として正常に動くかを確かめる必要があります。こうした作業を国内で担うことは、導入後の整備や改修を支える技術・人材の確保にもつながります。

 両社は、イギリス国内の産業による貢献割合を示す「UK content」を最大50%とする目標も掲げています。ただし、算定方法は公表資料に示されておらず、「部品の半分がイギリス製になる」とは断定できません。あくまで目標であり、達成済みの実績でもありません。

 さらに、中小企業を含む国内30社との連携や、20年以上にわたる支援構想も説明しています。外国の車両技術を活用しつつ、国内にも運用を支える仕事と人材を確保する提案です。

 軍用車の更新では、購入時の価格や走行性能に加え、部品供給や整備、改修を長く続けられるかも重要になります。国内産業への貢献割合だけでなく、価格や納期、支援の実効性まで見極める必要があります。チーム・ウルフは、ドイツの車両技術をイギリスで仕上げ、使い続ける体制まで売り込んでいるのです。