いま日本で最も「航続距離が長いEV」=BMW! “鼻”だけじゃない変化した“BMWらしさ” 新型iX3

タクシー市場 拡大傾向が続く

BMWが打ち出した次世代コンセプト「ノイエ・クラッセ」の第1弾となる新型BEV「iX3」が日本に上陸しました。公道試乗を通じて、BMWの変革と求める新たな世界観を分析します。

21世紀の「ノイエ・クラッセ」を目指す

 ドイツのBMWが打ち出した次世代コンセプト「ノイエ・クラッセ」。その第1弾モデルであるSUVの「iX3」が、2026年7月22日に日本でも発売となりました。

 見た目の変化は当然のこと、iX3はどのような新世代的な要素を詰め込んだモデルとなっているのか、そして今後も続々と登場する予定のノイエ・クラッセのモデル群は、どんな体験を与えてくれるクルマなのか。日本仕様の公道試乗を通じて検証していきます。

「ノイエ・クラッセ」と聞いてピンと来た人もいるかもしれません。ドイツ語で“ニュークラス”を意味するノイエ・クラッセは、1961年にデビューしたBMW「1500」をはじめとするモデル群の総称です。それまでのBMW車とは一線を画すコンセプトやメカニズムを持っていたノイエ・クラッセは、スポーティなセダンとして大ヒット。当時経営の危機にあったBMWを救った名シリーズです。

 そして、この“元祖”ノイエ・クラッセは後に「5シリーズ」や「3シリーズ」といった、同社を代表する車種へと発展。今日のBMWブランドのイメージを築き上げました。

 そんなBMWにとって重要な車名を、次世代コンセプトの名前に冠したということからも、同社が“21世紀のノイエ・クラッセ”にかける思いの大きさがわかります。これまでに市販車として発表済みのiX3、そして4ドアセダンの「i3」(2027年日本導入予定)はいずれもBEV(バッテリー式電気自動車)ですが、今後登場するBMWの新モデルは、BEVに限らず本コンセプトを汲んだものとなっていく予定。BMWに大きな変革が起きようとしているのです。

 さてiX3を見ていくと、まず特徴的なのはフロントフェイスのデザインでしょう。元祖ノイエ・クラッセシリーズのものをオマージュした、縦長のキドニーグリルが配されています。

 また外観だけでなく、メカニズム面でも大きな進化を遂げています。iX3はエネルギー密度の高いバッテリーや、走行抵抗の少ない効率的なモーター、そしてCd値0.24という、SUVとしては極めて空気抵抗の少ないボディ形状などによって、WLTCモードで906km(「50 xDrive」グレード)の航続距離を実現。これは2026年8月現在、日本市場で販売されているBEVのなかで最長です。

 また「Heart of Joy」と名付けられた、iX3の頭脳と言えるコントロールユニットも特徴的です。駆動やブレーキからのエネルギー回収をはじめ、走行に関する全ての制御を司るこの新しいコントロールユニットは、将来的にAI機能などのアップデートなどにも対応できるよう設計されています。

 そして、車体構造や車両の生産工程において環境負荷の低減が図られているのもポイントです。後輪にはレアアースを使わない「巻き線界磁気式同期モーター」が採用されているほか、Heart of Joyの搭載によって、配線類の総延長は1台あたり600mも短縮。これにともなってハーネス自体の重量も30%軽くなりました。さらに、生産を行うハンガリーのデブレツェン工場では、化石燃料を一切使っていないとのことです。

優れた運転支援システムと「BMW味」の薄さ

 では、実際にiX3の乗り味を公道で検証していきます。

 車内に乗りこむと、各種情報を表示するためにフロントウィンドウ下部に配置された「BMWパノラミックビジョン」が出迎えてくれます。先進的な見た目であるのはもちろん、視線移動が少なくて済むのが好印象です。一方、走り出すとフロント下部の視界が悪いとも感じましたが、ステアリングからワンタッチでカメラビューを起動できるので、慣れればそこまで問題だと感じなくなるでしょう。

 そして特に感動したのが運転支援システムです。その完成度は高く、不自然な印象がまったくありません。上手いドライバーが運転しているかのようなアシストで、筆者(西川昇吾:モータージャーナリスト)が体験したもののなかでは一番すぐれた運転支援システムだと感じました。航続距離が長いことも考えれば、ロングランをしたいという気持ちをいっそう掻き立ててくれるBEVだと言えそうです。

 他方、乗り心地はややハードな印象です。今回試乗したのがスポーティな味付けの「M Sport」グレードだったということもありますが、良くも悪くもBMWらしいスポーティさを感じる味付けです。ただ体で感じるロール量は少なめで、SUVでありながら旋回時の安心感が高いため、長距離の高速移動でも疲れないでしょう。

 ただし、気になったのはハンドルを切っていった時の感触です。BMWは、ハンドリングに優れるFR(フロントエンジン・リアドライブ)車を伝統的に作り続けてきたメーカー。これまでのモデルの多くはフロントノーズの入りがシャープで、スポーティな運転感覚を持ち味としてきました。

 しかし、iX3はコーナーでの安定感にはBMWらしさがあるものの、ハンドリング自体はシャープというよりマイルドで、安定志向が強い印象でした。そういった意味では「BMWの味」がやや薄味です。この乗り味はもしかすると、今後のノイエ・クラッセシリーズで共通の特徴になっていくのかもしれません。

 ハードウェアもソフトウェアも、そして乗り味も、これまでのBMWとは異なる世界観を持って誕生したiX3。今後「ノイエ・クラッセ」コンセプトを通じて、BMWがどのような変化を遂げていくのか、その方向性を感じさせるモデルであることは間違いないと筆者は考えます。