来年1月のAFCアジアカップに向け、24日のウルグアイ代表戦から新たな一歩を踏み出した森保ジャパン。第3次体制初陣の地・キューアンドエースタジアムみやぎには、4万4070人という超満員の大観衆が集結。FIFAワールドカップ2026ではベスト32に終わりながら、再起を図る日本代表への期待値は非常に高かった。
この日が初キャップだった松木玖生の先制弾が生まれ、幸先のいいスタートを切ったが、前半のうちに失点。1−1のまま後半アディショナルタイムに突入し、2023年3月の第2次森保ジャパン初陣だったウルグアイ戦(東京・国立)と同じスコアで終わりそうな雰囲気が色濃く漂った。
そこで勝利を引き寄せたのが、日本代表4試合目を迎えた21歳の若武者・塩貝健人だ。後半38分から投入された背番号26は左シャドーに陣取り、得点への強い意欲を全身で表現した。43分には久保建英から縦パスを受け、4対3の数的優位の中、ドリブルで一目散に前線へ。前を走っていた上田綺世や相馬勇紀が空いていたが、自ら突っ込んでボールをロスト。この3分後にも鎌田大地のスルーパスに抜け出したが、同じようにDF3人に囲まれてフィニッシュに行く前に阻止され、本人も心が折れそうになったに違いない。
それでも、めげずにゴールに突き進むところが、”ザ・ストライカー”だ。待望のシーンは2度目の決定機逸の直後に訪れる。伊東純也が中央で相手を引きつけ、左サイドに展開。塩貝は3度目の正直とばかりに中にいた上田にシンプルに預けると、次の瞬間、裏抜けを披露。そして右足を振り抜いて決勝点をゲットした。右人差し指を立てるパフォーマンスで、ここまでのさまざまな出来事を払拭して見せたのだ。
「日本中の人から応援の声があるのも僕に届いているし、W杯前から期待してもらっていたのに、なかなか点が取れていなかった。中にはドイツ2部でプレーしていること、今回の選出やW杯でいろんなことがあって、僕自身にもさまざまなメッセージが来て、日々すごく悔しい思いをしていた。そういうのをあの1点で黙らせるっていうわけじゃないけど、そんな感じの意味がありました」と塩貝はゴールパフォーマンスについて偽らざる本音を吐露した。
特にW杯時にブラジル代表について「昔は強かったけど、今はどうなんですかね」と対戦前に発言したことが、自動翻訳によって国境を超えて拡散されて炎上。本人のところに脅迫が届くほどの事態になり、家族や親族からも大いに心配されたという。「自分のゴールで身近な人、応援してくれている人を喜ばせられたらなとずっと思っていたんで、本当に嬉しいです」。3月のスコットランド代表戦で初キャップを飾ってから激動の半年間、そして想像以上の重圧……。塩貝はようやく解き放たれた様子だ。
日本代表4試合目、しかも全て途中出場での初ゴールは称賛に値する。ただ、今の塩貝は“ジョーカー”という位置づけでしかない。日本代表でも所属するヴォルフスブルクでももっと長い時間ピッチに立つためには、重要局面での判断力を磨いていく必要があることも確かだ。前述の2つの決定機逸のシーンでも、久保から「(結果的に点が)入ったからいいけど、あれは出さないとダメよ」と言われたというが、「ゴールを絶対に取るんだ」という意識が高まりすぎて、冷静さを欠いてしまうのが今の課題と言える。
「本当に試合に出続けるために、ああいうところは改善しなきゃいけない。名波(浩)さんだったり、長谷部(誠)さんからも『もっとシンプルにやってもいいんじゃないの』と指示をもらいましたけど、『点が点が』となるとボールしか見えなくなってしまう。実際、あのシーンでも外が見えていなかった。そこは改善できるところなので、ゴールだけで満足せずに違った部分を見せたいですね」と塩貝自身も足りない部分を素直に受け止め、向上していこうとしている。そのあたりが、上田綺世の言う「すごく思考力のある選手」というところなのだろう。
塩貝としては、絶対的エースFWから評価の言葉をもらったものの、自分の後にダメ押しの3点目を奪った上田の涼しい表情を見て、「自分はもっともっとやらなきゃいけない」と強く感じたようだ。「上田選手を見て、俺はこの1点で喜んでる場合じゃないなと。自分のゴールにつながったシーンのように、簡単にやるからこそ自分がフリーになれることもある。上田選手に落として抜け出したようなシーンを増やせればいいと思うし、そこは映像を見返してやっていくしかない。うまい選手はこのチームにもいっぱいいるんで、それを見習って改善していきたいですし、この期間を無駄にせずにやっていけたらいいと思います」と背番号26はギラギラ感を前面に押し出した。
生粋の点取り屋はまだまだ粗削りではあるが、近未来に大化けする可能性が少なからずある。世界が恐れる怪物へと変貌を遂げるためにも、柔軟性や駆け引きなどの足りない部分を貪欲に身に着けていくことが肝心だ。塩貝健人の高みを追い求めるチャレンジは、ここからが本当のスタートだ。
取材・文=元川悦子
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