アメリカ軍ではここ数年、戦闘車両での、ハイブリッド化を模索しています。その理由はどこにあるのでしょうか。
軍用車までハイブリッド化 なぜ?
2026年6月末にフランス・パリ近郊で開催された防衛装備展示会「ユーロサトリ」において、アメリカのオシコシ・ディフェンスは、ハイブリッド駆動を採用した軽戦術車両「eJLTV」を展示しました。
アメリカではここ最近、戦闘車両のハイブリッド化を模索しています。その理由はどこにあるのでしょうか。
eJLTVは、アメリカ軍の高機動戦術車両「JLTV」をベースに、ディーゼルエンジンと電動モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載したモデルです。基本的な防御性能や積載能力、オフロード性能は従来型と同等を維持しつつ、燃費の改善も図られています。さらに、エンジンを停止したまま電動モーターだけで静かに移動できる「サイレントドライブ」や、エンジンをかけずに各種電子機器へ電力を供給する「サイレントウォッチ」といった新たな能力を備えています。
また、車両から最大115kWもの大容量電力を外部へ供給できることも大きな特徴です。これだけの出力があれば、指揮所や各種通信機器、レーダー、電子戦装置、さらには対ドローン装備などへ電力を供給できる設計となっています。
一般的にハイブリッド車というと、燃費向上や環境性能を目的とした技術というイメージがあります。しかし、eJLTVが目指しているのはそれだけではありません。ドローンや電子戦が主役となった現代の戦場において、「静かに行動できること」と「大量の電力を供給できること」そのものが、新たな戦闘能力として重視され始めているのです。
目指すのは戦場のモバイルバッテリーか?
市場でハイブリッドカーの大きなセールスポイントとなるのは、燃費向上やCO2排出量削減といった環境性能です。しかし、eJLTVのハイブリッド化は、それとは発想が大きく異なります。むしろ「大量の電力を必要とする戦場」に対応するための大きなバッテリーシステムと考えた方が分かりやすいでしょう。
現在の戦場では、対ドローン用ジャマーやレーダー、電子戦装置、暗視装置、高性能通信機器など、多数の電子機器を常時稼働させる必要があります。実際、会場に展示されたeJLTVの車体上部には、30mm機関砲を備えたEOS製RWS(遠隔操作銃塔)とミサイルランチャーが搭載されていました。RWSは各種光学センサーや照準装置、コンピューターを備えるため、従来以上の電力を必要とします。
これらの機器へ電力を供給するためにエンジンをかけ続ければ、騒音や排気、また熱源を探知する赤外線によって敵に位置を探知される危険性が高まります。そのため、エンジンを停止したままバッテリーだけで電力を供給できる「サイレントウォッチ」は、単なる省エネ機能ではなく、生存性を高める重要な能力といえます。
さらに、最大115kWという大容量の外部給電能力を備えるeJLTVは、自らが「戦場の電源」となり、ドローンや無人車両への充電、野戦指揮所への電力供給なども担える可能性があります。
現時点では具体的な採用・配備計画は示されておらず、将来の実用化を見据えたコンセプト車両となっています。しかし、オシコシは2022年にeJLTVを公開しており、技術的には実用化段階に近いと考えられます。
かつて軍用車両は兵士や物資を運ぶことが主な役割でした。しかし、ドローンや電子戦装置が戦場の主役となりつつある今、その役割は「電力を運ぶ車両」へも広がろうとしています。eJLTVは、戦場を走る巨大なモバイルバッテリーという、新しい軍用車の姿を示し始めています。