生活支える井戸水、復旧遠く=4400世帯で被害、対応急ぐ―熊本・八代

人手不足とオフィス空室率の関係

 熊本地震の被災地で水道の断水解消に向けた作業が進む中、井戸の被害が生活や事業に大きな影響を与えている。生活用水に井戸水を使う家庭が多く、水道普及率が約52%と低い熊本県八代市では、約4400世帯の井戸に影響が出た。国は被害状況の調査や復旧費用の公費負担といった対応に乗り出している。
 同市緑町の吉田明子さん(66)は、全ての生活用水を賄う井戸水が使えなくなり、水道が通る市内の事業所まで毎日約1時間、車で往復している。2リットルペットボトル約30本やポリタンクに詰めた水の積み下ろしに加え、風呂やトイレのたびに数リットルを持ち運ばなければならないなど体への負担は大きく、「腰が痛む。水がない大変さを強く感じる」と吐露する。修理業者を依頼したが順番待ちで、見通しは立っていないという。
 同市古閑中町の韓国料理店「アンダミロ」では調理に使っていた井戸水が止まり、1カ月近く営業を休止している。店を営む皆吉美佳さん(46)によると、地下30~40メートルまで伸びる配管が地盤のずれで折れ曲がった可能性があり、井戸を掘り直す工事費用は数十万円に上る。業者に依頼が殺到しており、井戸水が使えるようになるのは数年先の見込みだという。
 同市で生まれ育ち、井戸水への愛着が深い皆吉さん。調理を担当する夫(57)も味への影響を心配しているといい、「上水道の開設を依頼したが、なんとか井戸水を取り戻したい」と訴える。
 断水に悩む事業者は他にも。ジビエの加工処理を行う「けもの道 祥」(同市大手町)では、イノシシの洗浄と解体に大量の井戸水を使っていたが、地中の配管が破損し、休業を余儀なくされた。代表の松村祥生さん(49)は「7~10月は書き入れ時で、このままだと数百万円の損失になる」と明かす。他の設備の故障もあるといい、「補助金が出るか分からず不安だ」と語った。
 こうした状況を受け、国土交通省などは「井戸水対応チーム」を立ち上げ、19日からは不具合の原因を調べるための洗浄作業を始めた。現地を視察した金子恭之国交相は23日、記者団に対し、原則個人負担だった復旧費用について「多くの家庭や事業所で井戸水が使われていることを踏まえ、災害救助費で支援できるようになった」と説明。復旧作業の体制構築を急ぐとした。 
〔写真説明〕ペットボトルやポリタンクにくんだ生活用水を運ぶ吉田明子さん=15日、熊本県八代市
〔写真説明〕地中で破損し使えなくなった井戸水くみ上げ用のパイプを握る皆吉美佳さん=15日、熊本県八代市
〔写真説明〕井戸の配管が通る地面の亀裂を指さす松村祥生さん=16日、熊本県八代市