日本、イギリス、イタリアが共同開発する次期戦闘機GCAP。その日本側拠点が名古屋に決定。なぜこの地なのか、世界3拠点を結ぶ開発体制の裏側に迫ります。
日本の開発拠点は「名古屋」だった!
日本、イギリス、イタリアが共同開発する「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」。航空自衛隊のF-2戦闘機の後継として2035年の就役を目指すこの次世代戦闘機について、日本における開発拠点が明らかになりました。意外にもその場所は「名古屋」です。
しかも、世界3カ所の拠点を“秘密のネットワーク”で結び、数千人もの技術者がひとつの戦闘機を作るという、これまでにない体制が整えられようとしています。
GCAPの日本における開発拠点が明らかになったのは、2026年7月にイギリスで開催されたファーンボロー国際航空ショーでのことでした。機体開発を担う日英伊3カ国の合弁会社「Edgewing(エッジウイング)」のマルコ・ゾフCEOが記者会見で、「グローバルサイト」と呼ばれる3つの開発拠点を整備すると説明したのです。
その場所は、イギリス・ワートン、イタリア・トリノ、そして「名古屋」です。
ゾフCEOによると、GCAPの開発には世界各地ですでに数千人のエンジニアが従事しており、これら3つの拠点にも人員を配置しているとのこと。さらに、各拠点には物理的な開発インフラも整えるとしています。つまりGCAPでは、どこか1カ所に技術者を集めるのではなく、3カ国に置かれた拠点で多数の技術者が共同でひとつの戦闘機を作り上げていくということになります。
では、なぜ日本側の開発拠点が「名古屋」なのでしょうか。実は名古屋周辺は、日本の航空機産業、なかでも戦闘機の開発や生産と非常に縁の深い地域なのです。
なぜ「名古屋」? 戦闘機と深い街の歴史
GCAPの日本側企業として機体開発に参加する三菱重工は、名古屋地区に航空宇宙関連の事業拠点を持っています。かつて航空自衛隊のF-2戦闘機の開発・生産で中心的な役割を担ったのも、この三菱重工でした。
さらに、現在の主力戦闘機であるF-35Aも名古屋と無関係ではありません。愛知県豊山町にある三菱重工の小牧南工場にはFACO(最終組立・検査)施設が置かれ、日本向けのF-35Aの組み立てが行われてきました。現在はF-35の整備拠点としても活用されています。
このように名古屋周辺には、戦闘機の開発や製造に関する人材や設備、ノウハウが以前から蓄積されています。GCAPの日本側拠点に「名古屋」が選ばれたのは、日本の戦闘機産業との深い関係があったからなのです。
しかし、GCAPがこれまで日本で開発されてきた戦闘機と大きく異なるのは、名古屋だけで設計するわけではないという点です。日本から遠く離れたイギリスやイタリアの技術者たちと、同じ戦闘機を同時に開発しなければなりません。
世界3拠点を結ぶ「秘密のネットワーク」
そこで重要になるのが、ワートン、トリノ、名古屋という3つのグローバルサイトを結ぶ通信網です。ゾフCEOは会見で、「secret communication infrastructure」を完成させると明言しました。直訳すれば「秘密の通信インフラ」ですが、これは戦闘機の設計データといった機密情報を、3カ国間で安全にやり取りするための通信基盤を指します。
戦闘機の設計データは高度な機密情報です。3カ国に分散した多数の技術者がひとつの航空機を共同で設計するには、設計段階から緊密な情報共有が不可欠となります。このネットワークは、物理的に遠く離れた3つの開発現場を、あたかもひとつの巨大な設計拠点のように機能させるための“要”といえるでしょう。
製造についても、ゾフCEOは3カ国すべてに機体部品を製造できる能力を整える計画だと説明しています。一方で、完成した機体を組み上げる最終組立ラインをどのように配置するかについては、2026年7月の会見時点ではまだ検討中とのことです。
GCAPは、もはや単に「日本で作る戦闘機」という枠には収まりません。「日本と世界をつないで作る戦闘機」として、その開発が進められています。