第509話 苦境の飲食業界 なぜ値上げに強い?大手外食チェーンに注目

苦境に強い?大手外食チェーン店

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、海の見えるカフェでコーヒーを飲みながら投資談義を行っています。


神様:8月5日、政府は食料品の消費税率を2027年4月から2年間、1%に引き下げる方針を閣議決定しました。今後、秋に開かれる臨時国会で審議されることとなります。

T:国民が待ち望んでいた食料品の消費税減税が前進しますね。しかし、2年間限定なのはなぜでしょうか?

神様:そもそもこの消費税減税は、令和11年度から本格的に導入される「所得に連動したきめ細かな給付」のつなぎとして実施される予定のものです。「所得に連動したきめ細かな給付」は、日本の中所得・低所得の現役労働者の税金や社会保険料の負担軽減を行い、手取りを増やす給付付き税額控除施策のひとつであり、政府が力を入れているものです。

T:なるほど。消費税減税が終わった後、中所得・低所得層への支援が継続的に行われるわけですね。物価高騰の軽減や子育て世帯への支援が実を結ぶことに期待したいですね。ところで、食料品の消費税減税には、飲食業界が大きな影響を受けそうですね。

神様:高市総理が7月30日に行った会見でも外食産業への影響については課題として挙げられました。総理は資金繰り等のための予算措置を検討し支援策を具体化すると述べています。臨時国会でも審議が重ねられると思われます。一方で、国内の飲食業は今すでに苦境に立たされています。東京商工リサーチによると、2026年1-5月の飲食業倒産件数は前年同期比で2.2%増となる411件でした。これは、同期間では1997年以降の30年間で最多であった2024年の408件を超え、最多件数更新となりました。

T:なぜ飲食店の倒産件数がこれほど増加しているのでしょうか?

神様:国内飲食業を取り巻く事業環境を見ると、食材費、人件費、光熱費などの上昇が経営を圧迫しています。しかし、一方で値上げの判断を下しかねる状況も見られます。単なる価格転嫁、つまり客から見れば各メニューの値上げは客離れや客単価の下落を招きます。この傾向は中小・零細規模の飲食店に多いのが実情です。

T:非常に厳しい環境ですね。食料品の消費税減税が実施されれば、食料品の仕入れは安くなるものの、消費税減税の対象ではない外食に足を運ぶ顧客が減れば、さらに経営への影響が懸念されます。外食産業に効果のある施策を期待したいですね。

神様:外食産業全体が苦境に立たされる中で、強いのは大手外食チェーンです。まず、上場企業を中心とした大手外食チェーンでは値上げが必ずしも客離れに直結していない傾向があります。日本フードサービス協会の統計によると、このところの値上げに伴う客単価の上昇があるにもかかわらず、客数の増加傾向が持続していることが明らかになっています。

T:「外食産業の月次動向」のグラフを見ると、6月は落ち込んでいるようにも見えますが。

神様:6月は度重なる台風の接近や土日が少ない曜日回りの影響で客数が失速したようです。しかし、それでも前年同月に比べると増加傾向を継続しています。

T:天気に左右されるわけですね。しかし、なぜ大手外食チェーンは強いのでしょうか?

神様:ファーストフード店では期間限定品やお得なキャンペーン商品など、ファミリーレストランやカフェなどではメニューの改編などを継続的に行い、値上げをしても顧客を飽きさせない対策を講じています。価格転嫁されても許容されやすい環境が作られています。

T:確かに、そう言われれば最近は大手外食チェーン店でも値上げが相次いでいますが、それでも足が遠のくことはありませんね。

神様:経済用語では、そのように値段が上がっても購入され続けるような商品を「価格弾力性が小さい」と言います。食料品や生活必需品などもそうですね。

T:価格弾力性が大きいと、値段が上がると購入されにくくなりやすいということですか?

神様:その通りです。大手外食チェーンは飲食業界の中では価格転嫁が許容されやすく、価格弾力性が小さいと言えるでしょう。今後の大手外食チェーンの動向にも注目してみましょう。

(この項終わり。次回8/26掲載予定)

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