ロシアのプーチン大統領が北方領土の択捉島を初訪問したことについて、ロシア政治を専門とする東京国際大の西山美久准教授に話を聞いた。
―なぜこのタイミングで訪問したのか。
ロシアでは9月に下院選があり、極東、特に北方領土を事実上管轄するサハリン州で政権や与党「統一ロシア」への支持を高める思惑があったとみられる。侵攻長期化で政権支持率がじわりと低下する中、訪問によって住民の愛国心をくすぐる狙いがあったと思う。
訪問前日の今月12日にプーチン氏はサハリン州で、ロシアの北方領土領有は「第2次大戦の結果」「国際文書で確定している」と述べているが、こうした主張は2005年以降、事あるごとにしていた。24年1月に「必ず行く」と発言しており、訪問は時間の問題だった。日本政府が抗議すると分かっていたはずだが強行したのは、もはや日本に配慮する必要はなく、中国や北朝鮮と連携を深め、今も続けるウクライナ侵攻を乗り切るという考えがあったのではないか。
―日本をどう見ていたのか。
ロシアでも高市早苗首相は(対ロ外交に熱心だった)故安倍晋三元首相の後継者と報じられた。高市政権下で(侵攻後に中断していた)日ロの学生交流再開や与党議員の訪ロがあり、対ロ方針が変わったとの見方もあった。しかし、高市政権は対ロ制裁を続けており、プーチン氏とすれば、日本はウクライナ侵攻でさほど影響を受けないにもかかわらず、厳しい態度を取っているという不満があったのだろう。
―今後の日ロ対話の可能性は。
侵攻後に首脳レベルの対話は行われておらず、ロシアはそれどころではない。侵攻を続けてウクライナを屈服させることしか考えていないだろう。北方領土に関しては日本は主張し続けていくしかない。やめれば誤ったシグナルを送ってしまう。一方、プーチン氏が訪れた以上、択捉島は「ロシア化」が着々と進むだろう。日本に対する遠慮や妥協はなく、厳しい状況だ。
〔写真説明〕東京国際大の西山美久准教授