対テロ戦争に大活躍した偵察・攻撃無人機MQ-9「リーパー」。しかし、“次の戦争”に向けて課題も明らかとなってきました。後継機はどんな能力になるのでしょうか?
イラク・アフガンの対テロ戦争で活躍
アメリカ空軍が、MQ-9「リーパー」の後継を見据えた新たな無人航空機構想を始動させました。2026年7月7日、アメリカ空軍と国防総省国防イノベーションユニット(DIU)は、「MMA(Massed Modular Aircraft:大規模モジュール式航空機)」に関する提案要求を公表し、産業界に対して広く技術提案を求めました。
現時点で後継機開発が正式決定したわけではないものの、その要求仕様からは、アメリカ空軍が将来の無人航空戦力に求める発想が大きく転換しつつあることが読み取れます。
MQ-9は、MALE(中高度長時間滞空)型無人航空機の代表格として知られます。24時間を超える長時間滞空能力を備え、電子光学/赤外線(EO/IR)センサーによる広域監視や情報収集を実施するとともに、「ヘルファイア」対地ミサイルや精密誘導爆弾による攻撃任務も遂行できます。アフガニスタンやイラクなど、制空権を確保した対テロ戦争では、その持続的な監視能力と即応性によって極めて高い成果を挙げ、アメリカ軍の作戦を支える重要な戦力として運用されてきました。
近代的防空システムを持った相手には分が悪い?
しかし、その成功は「制空権が確保された環境」という前提の上に成り立っていました。MQ-9は戦闘機に比べれば安価とはいえ、1機あたり約30億円に達する高価なシステムです。低速で機動性にも限界があるため、近代的な地対空ミサイルや電子戦能力を備えた敵の防空網に進出すれば、生存性は決して高いとはいえません。
その現実を突きつけられたのが、2026年の対イラン軍事作戦「エピック・フューリー」です。この作戦では約30機のMQ-9が失われたとされ、損失額は約1000億円規模に達したとみられます。
一方で、それらの無人機は敵防空網の位置や部隊配置を把握し、攻撃部隊へ目標情報を提供するなど、航空作戦全体の成功に大きく寄与したとも評価されています。つまり、撃墜された事実だけをもって失敗と結論づけることはできません。問題は、そのような損害を継続的に受け入れられる価格ではなかったことです。
後継機は「大量生産・使い捨て可能」
MQ-9が高価な航空機である以上、多数を失えば調達・補充には長い時間と莫大な予算を必要とします。その結果、指揮官は損害拡大を避けるため、MQ-9を危険な空域から後退させ、比較的安全な地域での監視任務へ振り向けざるを得なくなります。
しかし、それは敵中深くから得られる価値の高い情報を自ら放棄することを意味します。航空戦では情報優勢が勝敗を左右する以上、この判断は作戦全体の自由度を大きく損なうことになるでしょう。
MMA構想は、こうした課題に対する一つの答えです。要求されているのは、MQ-9に匹敵する性能を備えながら、機体各部をモジュール化し、任務に応じてセンサー、通信装置、電子戦装備、兵装などを容易に換装できる柔軟性です。そして何より重視されているのが、製造・運用コストを大幅に抑え、大量生産を前提とした設計思想です。
高価な航空機を温存するために行動範囲を狭めれば、敵の動向を把握する能力もまた低下してしまいます。であれば、一定の損失を許容しながら任務を継続できる航空戦力の方が、結果として高い軍事的価値を発揮する可能性があります。
MMAが目指すのは、多少の損失を前提としても継続的に戦力を投入できる航空システムです。撃墜されるリスクを否定するのではなく、それを運用思想に織り込み、迅速に補充できる生産能力まで含めて戦力として設計することを想定しています。