最大震度7を観測した熊本地震は、夏休みシーズン真っただ中の観光業に大きな打撃を与えている。熊本県によると、宿泊施設の建物や設備、宿泊キャンセルなどによる被害は計約60億円に上る。比較的被災程度の少ない地域にも影響は広がっており、関係者からは「お先真っ暗だ」との悲鳴が上がる。
県は11日、宿泊施設の建物や設備などで約40.4億円の被害が確認されたと発表。ほかに6日までの宿泊キャンセルは延べ約14万6000人、被害額は計約20.6億円に上る。阿蘇、天草地域は比較的被害が少なかったのに、キャンセルの6割が集中しており、木村敬知事は「風評被害はいけない。県内でも被災していない地域はある」と強調する。
上天草市の旅館「なかしま荘」では秋ごろまでの予約が軒並みキャンセルに。コロナ禍で奪われた体力が戻り切らない中、昨年8月の記録的豪雨での浸水被害や昨今の物価高に苦しんできたというおかみの中島加代美さん(58)は「お先真っ暗。自分を鼓舞してきたが、ここまで災難が続くと…」とうろたえる。
南阿蘇村のレジャー施設「阿蘇ファームランド」では来場者数が例年の半分ほどに減少。敷地内の宿泊施設でも今月10日までに約4800人分のキャンセルがあり、売り上げが約1億円減った。同社営業部の東正和統括部長(56)は「8月は書き入れ時だが予約は減る一方だ」と肩を落とす。
阿蘇市の観光名所・草千里にある「阿蘇火山博物館」でも地震後1週間の来館者数が通常の約3分の1に落ち込み、修学旅行などの団体客を中心に約400人分のキャンセルが出た。2週間がたち、徐々ににぎわいを取り戻しつつあるが、余震を心配する人も少なくないという。同館は通常通り営業しているとSNSで発信し続けており、豊村克則学芸員(40)は「早く元の状況に戻ってほしい」と訴える。
熊本市北区の旅館「植木温泉 旅館平山」では9月の大型連休を含め年内のキャンセルが相次いだほか、宴会需要も大幅に減った。女湯のタイルがずれるなどの被害があったが営業に支障はなく、避難者を受け入れるなどしている。10年前の地震でも多くの復旧関係者が温泉で英気を養ったといい、おかみの平山愛さん(51)は「疲れたらここで一休みしてほしい。自然から良いお湯をいただく旅館としての誇りだ」と話した。
〔写真説明〕地震の影響で来場者数が減り、空車が目立つ「阿蘇ファームランド」の駐車場=11日、熊本県南阿蘇村
〔写真説明〕地震の影響で宿泊者が減った「植木温泉 旅館平山」の温泉で体を休める男性ら=11日、熊本市北区
〔写真説明〕来館者数が減るなどの打撃を受けた「阿蘇火山博物館」がある観光名所・草千里=11日、熊本県阿蘇市