大和型戦艦はホントに「三馬鹿」なのか!? 各国主力戦艦との建造費を比較したら思わぬ結果が!

生保業界に起こるある変化とは?

当時の金額で1億3551万円の巨費が投じられた大和型戦艦は、その規模から無駄遣いの象徴として扱われることがあります。でも、各国の建造費を並べてみると意外な事実が浮かび上がります。

アメリカの戦艦は大和型の4倍高額!?

 旧日本海軍の大和型戦艦は「昭和の三馬鹿査定」の1つにも名が挙がるなど、高額なイメージを持たれています。基準排水量6万4000トンは世界最大であり、巨額の費用が投入されたことは間違いないため、そのように言われるのでしょう。では、他国と比較した場合は、どうなるのでしょうか。同時期の各国戦艦と比較して、どの程度高い戦艦なのかを検証してみましょう。

 なお、「建造費」がどこまでを含むのかは国ごとに異なると考えられ、目安でしかないことは注意が必要です。また、各艦の建造費については、諸説ある数字から抜粋したものとなります。各国の通貨を1940(昭和15)年のレート(フランスのみ1935年)で換算しています。建造時期により、物価なども異なりますが、こちらも目安とお考えください。

 最初に、日本国内で比較してみましょう。大和型戦艦は1隻1億3551万円(ダミー予算を含めた数字)。1トン(基準排水量)あたりは約2100円です。同時期の橿原丸級貨客船は1隻2417万円。1トン(総トン数)あたりだと約870円となります。重量である基準排水量と、容積である総トン数は直接比較できませんが、各国戦艦と客船の価格差の参考として、掲載していきます。

 アメリカはどうでしょう。ノースカロライナ級戦艦が建造費7689万ドル、円換算では3.28億円(1トンあたり9000円)です。同じくサウスダコタ級は7500万ドル程度(3.2億円/1トンあたり8400円)、アイオワ級が1億ドル(4.27億円/1トンあたり9500円)。また、客船のマンハッタンは2100万ドル(8970万円/1総トンあたり3700円)程度です。

 大和型および橿原丸と比較すると、アメリカの戦艦は1トンあたり大和型の4倍高額です。また、日米とも戦艦は客船の2.4倍程度の建造費となります。

 イギリスはキング・ジョージV世級が739万ポンド(1.27億円/1トンあたり3300円)程度、ヴァンガードが1153万ポンド(1.98億円/1トンあたり4500円)とされています。ヴァンガードは物価の上がった戦時中建造艦で、かつ主砲は流用品で建造費に入らないため、目安でしかありません。

 客船のクィーン・メリーは350万ポンド(6020万円/1総トンあたり750円)程度ですから、キング・ジョージV世級の4.4倍程度です。

 キング・ジョージV世級の建造費自体は大和型戦艦と大差ありませんが、客船の建造費から見るとかなり高い戦艦であることがわかります。

ドイツ・フランスの戦艦はさらに高額!

 フランスはダンケルク級戦艦が約7億フラン(2.1億円/1トンあたり7900円)、リシュリュー級戦艦が約20億フラン(6億円/1トンあたり1万6000円)とされています。

 リシュリュー級は建造ドックの関係で、いったん船体を分割してから、結合というややこしい建造方法が取られていますが、それでもダンケルク級と比較しても高すぎるので、単艦の純粋な建造費というより、兵装・艤装・戦時混乱、あるいは2番艦ジャン・バールの戦後完成に関わる費用まで含んだ数字である可能性があります。

 客船のノルマンディーは6.15億フラン(1.84億円/1総トンあたり2300円)です。ダンケルク級戦艦は1トンあたりでノルマンディーの3.4倍程度の建造費ですから、ノルマンディーが客船としては高いとも言えます。

 フランスと地中海の覇権を争ったイタリアは、ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦が推定8億リラ(1.8億円/1トンあたり4400円)、客船のコンテ・ディ・サヴォイアは1500万ドル(6400万円/1総トンあたり1320円)程度で、3.3倍程度。フランスと同じ程度です。排水量の大きさを考えても、イタリア戦艦は比較的安いようです。

 ドイツは基準排水量1万2100トンのポケット戦艦アドミラル・グラーフ・シュペーの時点で8200万ライヒスマルク(1.4億円/1トンあたり1万1600円)。単純比較はできませんが、6万4000トンの大和型戦艦の1.36億円よりも高いのです。シャルンホルスト級戦艦が1億4350万ライヒスマルク(2.45億円/1トンあたり7600円)、ビスマルク級戦艦が1億9680万ライヒスマルク(3.36億円/1トンあたり8100円)と、ドイツ戦艦はアメリカ戦艦並みの高額です。

 客船のブレーメンは6500万ライヒスマルク(1.11億円/1総トンあたり2150円)。シャルンホルスト級は1トンあたり3.5倍、ビスマルク級は3.8倍と客船と比べて戦艦が非常に高額と言えます。

 第一次世界大戦前までは、ドイツ戦艦はイギリス戦艦と大差ない価格でしたから、第二次世界大戦のドイツ戦艦が高額なのです。これは、何らかの政策的要因で実工費以上に高く計上されていたものと考えられます。当時の円やライヒスマルクは統制経済下にあったことや、貨幣の実力と相場が合っていなかったこともあるでしょう。

建造費の背景に人件費や物価水準など多様な理由

 ここまで見てきたなかで大和型戦艦(1.36億円)より安い戦艦は、イギリスのキング・ジョージV世級の1.27億円だけです。意外な結論ですが、なぜでしょう。

 その理由を一つに断定することはできませんが、各国の賃金・物価水準、軍艦建造費の計上範囲、国家統制下の価格、公定為替の違いが、数字に大きく影響していた可能性があります。

 当時の日本の人件費の安さや、国家による価格統制を考慮に入れたとしても、6万4000トンの大和型戦艦は各国の3万5000トン級新型戦艦よりもかなり安上がりな戦艦だったとも言えるでしょう。

 現代のスターバックスやマクドナルドが、時給だけ見ればアメリカは日本の数倍であるものの、物価そのものが数倍高いという具合に、賃金・物価水準が影響を与えたものなのでしょう。それでも、ドルベースで考えるなら、大和型戦艦が約3200万ドル、ノースカロライナ級が7690万ドルですから、日本が倍額で大和型戦艦を輸出しても、それでも大和型の方が安いとも言えます。

 以上のように、単純な建造費を比較すると大和型戦艦は決して高額な戦艦とは言えません。しかしそれは、生産国の賃金・物価・為替などの影響を受けたものでもあります。戦艦という巨大兵器にも、そうした国ごとの事情が価格差として表れていたと言えるでしょう。