全長18mにも及ぶ「連節バス」が、普通の交差点をスムーズに曲がれるのはなぜでしょうか。大型バスの約1.5倍の長さを持ちながら小回りが利く秘密は、車体をつなぐ「連節器」の驚きのハイテク制御にありました。
全長18mなのに街中をスイスイ曲がれる! 連節バスの秘密
神奈川県や千葉県、関西の一部都市などで見かける、車体が真ん中で「くの字」に折れ曲がる長いバス、いわゆる「連節バス」。2つの車体を蛇腹(じゃばら)の幌(ほろ)でつないだ姿は海外のバスのようで、街中でもひときわ目を引く存在です。
国土交通省の「連節バス導入ガイドライン」によると、連節バスは通常の大型路線バスの約1.5倍の輸送力を持ち、ドライバー不足への対応や通勤ラッシュ時の輸送力強化策として、全国で導入が進んでいます。
ただ、ここで素朴な疑問が浮かびます。これだけ長い車体で、どうやって街中の交差点を曲がっているのでしょうか。
たとえば、日本でもっとも普及している連節バスのひとつ、メルセデス・ベンツ「シターロG」の全長は約18m。通常の大型路線バスが約11mですから、およそ1.6倍もの長さがあります。それにもかかわらず、三菱ふそうトラック・バスの資料によると最小回転半径は9.6mで、通常の大型路線バスと大きく変わらない水準です。
とはいえ、これは「どんな場所でも普通の大型バスと同じように曲がれる」という意味ではありません。実際には車体後部の振れ幅や内輪差は大きくなるため、連節バスの運行には道路幅や交差点形状など一定の条件が求められます。
それでも、18mもの長大な車体が街中の交差点をスムーズに走り抜けられるのは、車体をつなぐ「連節器」の高度な制御に秘密がありました。
「折れ曲がり」をコンピュータで緻密に制御
日本で導入されている連節バスの多くは、前車体に2軸、後車体に1軸を備える3軸構成です。この巨体をスムーズに走らせる心臓部が、2つの車体をつなぐ「連節器(ターンテーブル)」です。
いすゞ自動車などによると、この連節器にはコンピュータ制御された油圧ダンパーが組み込まれています。
交差点などを低速で曲がる際には、運転士のハンドル操作に合わせて前後の車体が自然に折れ曲がり、その角度を連節器が適切に制御します。これにより、後ろの車体は前車体に近い軌跡を描きながらスムーズに追従し、長い車体でも無理のない旋回を可能にしています。
一方、ある程度の速度で走行している際には、連節器が車体の折れ角を抑える方向へ制御されます。これにより、高速走行時のふらつきや、急な操舵による車体の不安定な動きを抑え、安定した走行性能を確保しています。
さらに、過去に導入された一部の輸入連節バス(ネオプラン製など)では、一番後ろの車軸が前輪とは逆方向へ切れる「逆位相ステアリング」を採用した例もありました。これにより、旋回時の車体後部の動きを抑え、取り回しの向上を図っていました。
このように、連節バスは高度に制御された連節器を中心に、車種によっては後輪操舵なども組み合わせることで、18mという長大な車体でありながら、市街地での運行に必要な優れた取り回し性能を実現しているのです。
ちなみに、連節バスは見た目こそフルトレーラーに似ていますが、車体を切り離して走行する構造ではありません。そのため日本では「単一の車両(大型バス)」として扱われ、けん引免許は不要で、大型二種免許があれば運転できます。
もっとも、後退時の車両挙動はトレーラーに近く、高度な運転技術が求められます。このため、事業者によっては運転士にけん引免許の取得を勧めているケースもあります。
次に街で連節バスを見かけたら、ぜひ車体中央の「連節器」にも注目してみてください。18mもの巨体が市街地の交差点をスムーズに曲がる姿の裏には、運転士の技術だけでなく、目に見えない高度な制御技術も活躍しているのです。