「天と地を見ているような3年半」を経て、菅原由勢は2030年へ歩み出す「ワールドカップというものは本当に特別な舞台」

インフラ整備 予防保全型へ転換

 FIFAワールドカップ2026のベスト4は、フランス代表、スペイン代表、イングランド代表、アルゼンチン代表という極めて順当な顔ぶれとなった。今大会で優勝を目指していた日本代表の面々にしてみれば、トップ4に入るのがどれだけ難易度が高いのかを改めて痛感させられたはずだ。

 キャプテンの板倉滉も12日に福岡市内で自身が発起人となって開催したイベント『KCP(Ko Creation Project)』の記者会見で「(強豪が)ちゃんと打倒に上がってきているなというのは感じるところはあるし、(ラウンド16の)ブラジル対ノルウェー戦も見ていましたけど、すごい悔しくなりました」と語っていたほどだ。

 同イベントには日本代表のチームメートである谷口彰悟、冨安健洋、菅原由勢の3人も参加。この中でひと際目立っていたのが菅原だった。最初の小学生とのミニサッカー大会では誰よりも長い距離を走って、次々とゴールをゲット。“大会得点王”に輝くと、第2部の芸人グループ「スマイラーズ」との試合でも2得点。「ここからが2030年大会へのスタートなんだ」という気迫を大勢の子供たちに示したかったのかもしれない。

 その菅原にとって、今回のワールドカップ出場は長年の悲願に他ならなかった。「個人的に東京五輪に落選し、カタール大会も落ちて、そこから代表に呼ばれるようになって出場機会をつかめていた中で、(2024年1〜2月の)アジアカップ後に悔しい思いをした。最終予選は全く出番を掴み取れず、その後は代表にも呼ばれないことがあった。自分の中では『天と地を見ているような3年半』だった。このワールドカップに向けて、自分が払ってきた犠牲は凄まじいものがありました」と本人もブラジル戦敗戦翌日の取材対応でしみじみと語っていたが、ここまでの歩みは本当に壮絶なものだったのだろう。

「ワールドカップというものは本当に特別な舞台なんだ」と再認識したエピソードを今回のイベントで明かした。「初戦のオランダ戦前日か前々日の夕食後、滉くんと(堂安)律くんが自分の部屋にやってきて、『いいから座れ』とまず言われました。そして『お前、ワールドカップでいいプレーをしようなんて思ってないよな』と見たこともないような真顔で問いかけられた。『そんなナメた考えを持ったらダメなんだ』とも強く言われ、めちゃくちゃ気合が入りました」。

 それがオランダ戦終了間際の鎌田大地の劇的同点弾につながる伊東純也への縦パス供給に凝縮されていたのかもしれない。後半30分からピッチに立った背番号2は、イキイキと躍動感あるプレーで攻撃を活性化。右CK奪取に貢献し、チームを救う大仕事をやってのけた。

 この活躍が評価され、続く第2戦のチュニジア戦ではクローザーとして登場。ゲームを締める役割を果たす。そして第3戦のスウェーデン戦では念願のスタメン出場。結果は1−1のドローではあったが、菅原はできることをやり切った。このグループリーグ3試合で自分の役割を明確に整理し、決勝トーナメントに向かえたはずだった。

 決勝トーナメント1回戦のブラジル戦で後半21分で投入された時、チームは絶体絶命のピンチに陥っていた。森保一監督は菅原や鈴木淳之介に前への矢印を持ったプレーを期待したが、相手の圧を押し返せない。それは田中碧や町野修斗が入った後も変わらず、最終的にはガブリエウ・マルティネッリの一撃を浴びてしまった。

「自分たちのやりたいサッカーが攻守にわたってほぼほぼできていなかった。彼らの攻撃に対して受け身にならざるを得ない部分もあったと思うし、僕が入ってからは左サイドの選手(ヴィニシウス・ジュニオール)とマッチアップしてましたけど、自分一人で抑える能力があれば、プラス1で走ってくる選手(ドウグラス・サントス)の走力を抑えられたし、僕らの頭の疲労度も軽減できた。圧倒的な個人の力不足かなと強く感じます」と菅原は悔しさを噛み締めていた。

 そういったプレーができるようになるためには、ここからの4年間で自分自身を飛躍させるしかない。目下、イングランド2部・サウサンプトンの所属で、昨季はブレーメンに買取オプション付きでレンタルされた。チームは最後の最後までブンデスリーガ1部の残留争いに巻き込まれたが、何とか踏みとどまったため、買取オプションが行使されれば一番いい。それが難しかったとしても、欧州5大リーグ1部に赴き、よりタフな環境でプレーすることが重要だ。

 今回のイベントで去就についてのコメントはなかったが、本人もドイツやイングランドの最高峰リーグでやりたいという思いが強いはず。そこで圧倒的な違いを作るアタッカー陣を封じられる守備力を磨き、ストロングである攻撃面でももっともっとレベルアップしなければならないのだ。

 可能であれば、菅原には伊東純也のようにゴールに直結する仕事のできる右サイドプレーヤーになってほしいところ。4年という時間は長いようで短い。次のターゲットに向かって貪欲に突き進んでいくしかない。賢い菅原は誰よりもよく分かっているに違いない。

取材・文=元川悦子