日野が大型観光バスの新型「セレガ」の報道陣向け試乗会を開催しました。イベントでは、運転士に非常事態が発生した際に作動する「EDSS」(ドライバー異常時対応システム)の実演も行われました。
安全システムも充実させた新型「セレガ」
日野自動車が2026年7月2日、大型観光バスの新型「セレガ」の報道陣向け試乗会を開催しました。ここでは、運転士に非常事態が発生した際に作動する「EDSS」(ドライバー異常時対応システム)の実演も行われました。
日野は新型セレガについて、デザインやパワートレインの変更のほか、安全装備の充実にも力を入れたと説明します。
新たな機能としては、標識認識や出会い頭警報、左折巻き込み警報、車線変更警報などを持つ「サイトアラウンドモニターシステム」を採用。EDSSやPCS(プリクラッシュセーフティ)、LKA(レーンキーピングアシスト)などと連携することで、安全面でより高度な運転サポートが可能になったといいます。
なかでもEDSSは、運転士の急病など、走行中の異常に対して車両を“自動で停止させる”安全システムです。
作動すると非常ブザーやホーンで車内や車外に危険を知らせるとともに、自動制御で車線内に戻りつつ、自動ブレーキで速やかに停車することを可能にしています。乗客や運転士による手動操作のほか、運転状況の常時モニタリングによる自動検知でも作動します。
昨今は外国人を含む観光需要が急伸している一方、バス運転士の担い手不足も深刻さを増し、労働環境の悪化や高齢化がしばしば問題となっています。日野の担当者も「需要は増えても運び手が足りない状況」だと話します。
そうしたなかで運転士が走行中に体調を崩し、事故につながるケースも大きく報道されています。2026年4月には都営バスで、実際に乗客がEDSSを操作して車両を止め、事故の被害を最小限に食い止めた事案もありました。
“気絶のフリ”では作動せず?
EDSSのデモンストレーションは、まず手動操作での実演から行われました。走行中に乗客役がボタンを操作すると、非常ブザーやホーンが鳴り、車内の赤色ランプが点灯。3秒ほどの緩やかな自動ブレーキのあと、新型セレガは急ブレーキ状態で速やかに停止しました。
最初の緩やかなブレーキは、誤操作やいたずらの際に運転士が対応できるようにするためとのこと。運転士自らが操作した際は、初めから急制動がかかりました。
一方、自動検知によるシステムの作動については少々難儀する場面もありました。実演では運転士役のテストドライバーが気を失った演技をしつつ、車両を車線からだんだんと逸脱させていく操作が行われましたが、最初の数回はシステムが作動しなかったのです。
日野の開発スタッフによると、原因は雨まじりの曇りという当日の天候や、走行開始から間もない状態でテストしたことなどが考えられるそうです。また、「システムがより高精度になったことも、逆に影響したかもしれない」といいます。スタッフは「さまざまなデータを収集しながら異常を判定しているので、気絶した“フリ”だと見破られた可能性がある」と説明しました。
しかし天候もやや回復し始めた最後の実演では、ついに自動検知が成功しました。手動での操作時と同じく警報や非常ブレーキが作動するとともに、レーンキープ制御などとも連携。車線からの逸脱を運転士の介入なく修正し、車線内に戻って停止しました。
試乗を終えた後、日野の開発スタッフは「安全技術は長年かけて少しずつ進化してきましたが、今回の実演ではなかなかうまくいかない場面もありました。しかし、それが現実の難しさでもあります」とコメント。「これからもメーカーとして、ユーザーの皆様にもシステムの正しい使い方を伝えていきたいです」と強調しました。