米建国250年、揺らぐ歴史事実=トランプ政権「美化」図る―強まる反発、結束見えず

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 米国は4日に建国250年の節目を迎える。全米各地で記念行事が行われ、祝賀ムードが広がる一方で、トランプ政権が米国史の負の側面の修正を進め、「美化」を図っていることに反発も強まっている。「光と影」を併せ持つ歴史的事実の扱いを巡って対立が深刻化し、国民の結束は見られない。
 ◇「反米思想」排除
 「トランプ政権は美化された愛国主義を国民に求めている。良い歴史であれ悪い歴史であれ、書き換えることはあってはならない」。建国250年を目前に控えた6月26日、独立宣言が採択された建国の地である東部ペンシルベニア州フィラデルフィアに集まった市民らおよそ100人が、こう声を張り上げた。
 独立国立歴史公園の一角にある初代大統領ジョージ・ワシントンが暮らした大統領邸跡「プレジデンツハウス」では、ワシントンが所有していた9人の奴隷や、米国の奴隷制の歴史を紹介する展示が行われていた。
 しかし、トランプ政権は1月、奴隷制に関する展示物を撤去。国立公園局を管轄する内務省は「国家的価値観との整合性を確認するよう求める大統領の指示に従い撤去・修正を行っている」と説明した。
 トランプ大統領は第2次政権発足後、「反米的な思想」の排除を掲げ、博物館や教育機関に展示や教育内容の修正を要求。全米の国立公園などでは先住民の迫害や気候変動に関する説明の取り外し作業も進んでいる。首都ワシントンを中心に所在するスミソニアン博物館でも展示内容の見直しを迫られ、トランプ氏の弾劾訴追に関する記述が一時削除される事態まで起きた。
 ◇「消えゆく理念」に危機感
 こうした政権側の恣意(しい)的な動きに対し、危機感を抱く市民は少なくない。独立宣言が署名された独立記念館近くには18世紀に星条旗を初めて作ったことで知られるベッツィー・ロスの家がある。訪れていたカレン・アンドラーデさん(62)は「建国250年を迎えた今、人々が命懸けで守ってきた民主的な理念が失われつつある」と憤る。プレジデンツハウスの奴隷制展示は裁判所の命令により一部が復元されたが、政権が再び撤去に乗り出すとの懸念がくすぶる。
 建国250年は本来、国民が共通の理念を確認し、結束を図る機会になると見なされてきた。だが実際には、トランプ氏がホワイトハウスで格闘技の試合を開催するなど祝賀行事を「私物化」し、政治的対立を背景にした社会の分断は一層深まっている。米調査会社ギャラップが6月に公表した調査では、独立宣言の署名者たちが現在の米国に「失望するだろう」と答えた人は77%に上った。
 独立国立歴史公園にある米独立と奴隷解放の象徴「自由の鐘」には、「この地に住む全ての人々に自由を宣言せよ」との旧約聖書の一節が刻まれている。日系米国人の公民権活動家マサル・エドマンド・ナカワタセさん(82)はこれに触れ、米国のさらなる繁栄に向け「過去の負の側面に目を背けず、歴史の事実を受け継いでいく必要がある」と語った。(フィラデルフィア=米ペンシルベニア州=時事)。 
〔写真説明〕トランプ政権による奴隷制展示の撤去に反対の声を上げる市民ら=6月26日、米ペンシルベニア州フィラデルフィア
〔写真説明〕奴隷制展示の一部が撤去された初代米大統領ジョージ・ワシントンが暮らした大統領邸跡「プレジデンツハウス」=6月26日、米ペンシルベニア州フィラデルフィア