家族が「SSSS航空券」を引き当ててしまった…! 乗る前から“異変” 保安検査員も「Oh…」 誰でも起こり得る“緊迫の一部始終”

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アメリカに発着する航空旅客便の搭乗券に、まれに「SSSS」という4文字が印字されることがあります。これは一体何を意味し、もし印字されたらどう対処すればよいのでしょうか。

わたしだけオンラインチェックインができない!

 アメリカに発着する航空旅客便の搭乗券に、「SSSS」という謎の4つの英文字が印字されることがあります。遭遇するのは「かなりレア」(航空会社関係者)とされ、勤務先でアメリカのニューヨーク、ワシントン両支局にかつて駐在した筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)も経験したことはありません。

 ところが、2026年6月に日本からカナダ経由でアメリカへ入国した筆者の家族の搭乗券に、「SSSS」の4文字がしっかりと記されていました。日産自動車が製造していた乗用車「ブルーバード」の高性能版「SSS」は「スーパー・スポーツ・セダン(Super Sports Sedan)」の頭文字の略でしたが、搭乗券の「SSSS」は何を意味し、どのように対処すればいいのでしょうか。

「いつもと違う」と気づかされたのは、日本を出発する前日でした。筆者の妻は成田空港発カナダ東部モントリオール行きのエア・カナダAC5便と、モントリオールからニューヨーク・ラガーディア空港行きのAC8634便を乗り継ぐ予定でした。出発24時間前にオンラインチェックインの案内が電子メールで届きましたが、予約番号と名前を入力しても「エラー」と表示されて手続きを進められないのです。

 そこで成田空港のカウンターでチェックイン手続きをしたところ、2枚の搭乗券を渡されました。成田からモントリオールへの搭乗券は通常通りの見た目ですが、モントリオールからラガーディアへの搭乗券の左下と半券の下部には「SSSS」の4文字が入っていました。

「SSSS」に選ばれると「オンラインチェックインはできなくなり、空港のカウンターで搭乗券を受け取ることになる」(航空関係者)そうです。

どんな人が選ばれる!?

 この「SSSS」は「Secondary Security Screening Selection」の頭文字の略で、日本語で「二次的保安検査選出」の意味。アメリカを発着する旅客便利用者の一部を対象に、アメリカ運輸保安庁(TSA)が追加のセキュリティー検査を実施する場合に印字されます。

 筆者の妻の場合も、カナダからアメリカへ向かう航空券が対象となりました。同行者は必ずしも対象になるわけではなく、筆者の搭乗券には「SSSS」の文字がありませんでした。

「SSSS」が印字される対象として、一部のサイトでは犯罪歴がある人や、要注意人物、そうした対象人物と同姓同名で誤認される場合をおどろおどろしく紹介しています。また、航空券を直前に購入したり、予約が片道だけだったり、航空券を現金で買ったりした場合に選ばれやすいとの指摘もあります。

 もっとも、それらはあくまでも一部の事例に過ぎません。筆者の妻はいずれにも該当せず、これまでに「SSSS」の搭乗券を受け取ったことはありませんでした。実際には「無作為に選ばれる場合が多いようだ」(航空業界関係者)と言います。

「君は口を出すな」緊迫の雰囲気のなか

 もしも搭乗券に「SSSS」が印字された場合、どのように対処すればいいのでしょうか。答えは「追加検査を受けることになるため、早めに空港へ向かう」ことと、「追加検査は義務のため、係員の指示に素直に従う」ことです。

 国際線の搭乗は一般的に、出発時刻の2~3時間前に着くことが目安だと聞いていたため、筆者と妻はモントリオール空港へ出発時刻2時間前に到着しました。ただし、もっと早く着くべきだったことを、その後思い知らされます。

 預け入れ荷物をカウンターに持ち込んだ際に妻が搭乗券を見せると、地上職員は「保安検査を受けた後、必ず赤い印を押してもらってください」と強調しました。

 保安検査場では乗券を一目見た女性職員は「Oh…」といいながらのけぞる仕草を見せました。そして、搭乗券を赤色の専用ケースに入れました。

 このケースは「SSSS」が印字された搭乗券なのを他の職員にも気づかせ、問題がなければ赤い印を押すことを忘れないようにすることが目的のようです。

 手荷物をX線手荷物検査装置でチェックする行程は同じですが、装置の前段階で男性職員が妻のかばんを隅々まで確認します。「スマートフォンはカバーから取り外すように」と命じられました。

 男性職員は妻に「中に液体は入っていないか」と英語で尋ねました。モントリオールがあるケベック州はフランス語が公用語のため職員の英語はフランス語風の発音で、職員が発した「Liquid(液体)」の言葉を妻は聞き取れていませんでした。

 そこで私が「液体は入っていないかと聞いている」と日本語で伝えたところ、職員は「私はこちらの女性に質問をしている。君は口出しをしないでくれ」と注意されました。

 妻のかばんは手荷物検査装置をくぐり抜けた後もベルトコンベアからはじかれ、別の男性職員が再び中身を見回します。ボディーチェックも厳重で、妻が金属探知機を出た後は女性職員が入念に検査しました。

 この間、かかったのは8分程度。筆者は金属探知機を通り、持ち込んだかばんが手荷物検査装置を通過するのに2分程度だったため、「SSSS」の4文字で4倍の時間を要したことになります。

待ち受ける入国審査に100人の列

 手荷物検査とボディーチェックを終えると、妻の搭乗券には赤い印が押されていました。さらに入国審査官が気づくように、「SSSS」の文字の脇に紫の蛍光ペンで矢印を書いていました。この段階で赤色の専用ケースは回収されます。

 カナダからアメリカに入国する場合、ユニークなのはカナダでアメリカの入国審査をすることです。「SSSS」の搭乗券の場合、審査官からの質問項目が増えて普段より長くかかると予想しました。

 エア・カナダAC8634便の搭乗開始7時50分までは55分、出発時刻(8時15分)15分前の搭乗締め切り予定時刻まで1時間5分あり、利用者が限られる早朝ということもあって十分余裕があると思っていました。

 ところが、入国するのは2001年にニューヨークの世界貿易センタービル崩落などの同時多発テロに遭ったアメリカです。しかもドナルド・トランプ大統領(共和党)は不法移民の流入を阻止するように厳命しているだけに、「外国人の入国審査は、ジョー・バイデン前大統領(民主党)時代に比べて時間がかかるようになった」と耳にしていました。

 案の定、外国人の入国審査には長い行列ができており、ざっと数えて100人近く並んでいました。しかも早朝のため審査官の人数が少なく、遅々としてなかなか進みません。近くに並んでいた利用者は「もう7時になるのに、これしか審査官がいないのか」と不満を口にしていました。

 潮目が変わったのは7時半ごろで、出勤してきた審査官が加わって列の進み方が急に早くなりました。搭乗開始10分前の7時40分、ついに順番が来ました。

 筆者は審査官にあいさつすると、アメリカを訪れる用件を英語で手短に伝えました。アメリカの入国審査時には顔写真の撮影や、指紋採取があり、この日は顔写真撮影でした。

 撮影を終えた後、「SSSS」が印字された妻に対して質問が投げかけられることを想定しました。ただし、手荷物検査での教訓を踏まえると安易に助け船を出すことは避けるべきで、その場合には審査官に「妻に日本語で説明してもいいですか」と尋ねようと考えました。

 ところが、事態は予想外の方向へ進みました。

最後は「アリガト」の言葉

 審査官は搭乗券を眺めると、「おや、搭乗時間が迫っているじゃないか。急いで搭乗口に向かいなさい」とあっさりと通してくれたのです。日本語で「アリガト」と言って笑みを浮かべ、送り出してくれました。

 眼光鋭く、険しい表情で対応することが多いアメリカの審査官には珍しい「神対応」の審査官に当たったようです。おかげで後ろめたいことは全くないとは言え、搭乗開始の5分前に搭乗口に気分よく到着することができました。

 今回の経験を踏まえてお伝えすると、「SSSS」が印字された搭乗券が発券されても、それは入国拒否を意味するわけではありません。

 したがって神経質にならず、堂々と対応すれば大丈夫です。ただし、追加検査を受けることは義務のため、係員の指示に素直に従うことが重要です。

 そして、十分に余裕を持って空港に着くことが重要です。アメリカの入国審査を出発前に実施するカナダの空港は「出発時刻3時間前の到着」を促しており、筆者と妻の場合は実際より1時間前の3時間前に着くようにすべきだったのが反省点です。

「SSSS」が印字されたためにやきもきし、骨が折れる面もありましたが、「かなりレア」な搭乗券が手に入りました。その点では、収集癖のある乗りものファンには朗報と言えるのかもしれませんが……。