弁護士らが若い世代を対象に司法の魅力を伝える「司法教育」が好評を博している。「司法教育支援協会」(東京都千代田区)が主催したセミナーと模擬裁判には活動開始から3年超で中高生ら約1000人が参加。法曹を志す若者も出ており、弁護士らは全国的な普及を目指している。
同協会は元検事の熊田彰英弁護士(56)が中心となって2023年1月に設立。法務省などの協力も得て活動しており、これまでにセミナーや模擬裁判をそれぞれ10回以上開催した。学生や生徒は無料で参加でき、学校が依頼する場合も費用はかからない。
セミナーでは検察官、弁護士、裁判官の法曹三者だけでなく、警察官や刑務官、保護観察官ら刑事司法に関わる実務家が一堂に会し、刑事手続きの流れや仕事のやりがいを紹介。模擬裁判では、架空の事件をモデルに参加者がそれぞれ法曹三者の役に分かれ、検察官や裁判官出身の弁護士らの指導を受けながら、判決までの裁判の流れを体験する。
設立の背景には、法曹・実務家を目指す若者の減少や、法律家の質の低下が指摘されていることなど、司法の現状に対する危機感がある。熊田弁護士は「司法は民主主義や法治国家の礎で、人材が枯渇すると国家や社会の衰退につながる」と危惧する。
セミナーや模擬裁判を経験した中高生らからの評価は高い。3月下旬に都内で実施された模擬裁判に参加した当時中学2年の男子生徒は、昨年セミナーを受講したことで司法への関心が強まったといい、「法曹は社会に必要不可欠な仕事だと分かった。今後目指したい」と話した。参加者の中には法学部に進学したり、将来法曹を目指したりする生徒が増えているという。
熊田弁護士は、今後の課題として協会を運営するための事務局体制の充実と財政基盤の強化を挙げ、「企業を含めさまざまな方面からの支援を得たい」と訴えた。今後は各地の検察庁など関係機関と協力して首都圏以外での開催を増やすのが目標で、「若い世代に響く形で司法の魅力を伝えることが重要だ」と強調した。
〔写真説明〕取材に応じる元検事の熊田彰英弁護士=4月27日、東京都千代田区