アジアいち美しいかもしれない線路!? 「まるでトトロの世界」を走る路面電車とは? 軌道の8割を“緑化”

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台湾南部の大都市・高雄では、2016年からLRTが開通し、2024年には全面的に路線が通ると、市民や旅行者にとって重要な「足」となりました。実際に乗ってみたところ、かつての高雄から大きく変化しているようです。

台北のMRTと高雄のLRTの違い

 アメリカ発祥のライトレール(以下、LRT)は、路面電車と地下鉄などのラピッド・トランジットとの中間的な軽列車のことを指します。これまで欧米諸国では数多く導入され、アジアでも1984年のフィリピンでの導入を皮切りに香港、中国にも路線が開かれています。

 台湾でも南部の大都市・高雄で2016年より一部区間が開通すると、2024年には全面的に路線が通り、高雄市民はもちろん旅行者にとっても重要な「足」となっています。

 台湾の軽列車と言えば、台北のMRTが有名です。台北市内の地下・地上あちこちに路線が張り巡らされ、複雑な市内の移動を便宜的にしてくれる画期的な軽列車です。そして高雄にも3両編成のMRTが2路線通っていますが、MRTとLRTは一体何が違うのでしょうか。

 MRTの語源はMass=大量、 Rapid=高速、Transit=輸送・乗り継ぎ。つまりMRTとは「大量の人々を高速で移動させる乗りもの」という意味になります。

 一方のLRTの語源はLight=ライト・軽い、Rapid=高速、Transit=輸送・乗り継ぎ。つまりLRTとは「MRTよりも小規模な軽列車」という意味になります。

 高雄のMRTは南北と東西の2路線が通っていますが、LRTはそれを補完する外環状線として計画されました。LRTになったのは、専用線を建設するMRTと比べて既存の道路空間が使えること、また架線を無くす構造で景観に配慮できること、また一部、既存の鉄道の廃線を使えることなどが挙げられます。

 MRTがなかった頃の台北、LRTがなかった頃の高雄を知る筆者(松田義人、ライター・編集者)は、これらの交通網のありがたさを実感しています。

 かつてMRTのなかった台北市内を移動するには、バスかタクシーが主流で、街中はディーゼルの黒煙、無数の2ストロークバイクから吐き出される白煙が街中を覆っていました。そんな経緯がある中で、1996年に開設され路線が伸びていったMRTは本当にありがたく、また台湾経済全体にも大きく寄与したものと思います。

 一方、LRTがなかった頃の高雄は、台北ほど過密な街ではなく港から吹く風などもあり、街中は比較的綺麗ではありました。しかし市内の移動がとにかく大変で、庶民の移動はバイクが主流でした。

 交通事故リスクなどの観点からも新しい交通網が求められていたなかで、高雄のLRTは 2016年から運行が始まりました。以降の10年で、市内の移動は劇的に便利なものとなり、高雄人の生活にとって画期的なインフラとなりました。

高雄LRTの軌道周辺の80%以上が「緑化」されている

 もう一つ、高雄のLRTが良いと思うのは、軌道周辺の「緑化」です。

 高雄のLRTは、架線がなく街中に溶け込むように作られています。さらに、LRTの軌道周辺の80%以上に「緑化」がなされており、これもまた実に合理的で、大きく3つの理由があるようです。

 一つ目の理由は、ヒートアイランド現象などの緩和です。軌道周辺を緑化することで、高雄市内のヒートアイランド現象を抑えることが期待できるといわれています。

 そして次に、高雄のLRTは架線レスです。前述の通り、空を広く見せることでこの都市の景観価値がさらに高まるため、緑の軌道が望ましかったといわれています。

 そして最後の理由が、路線区間との関係です。高雄のLRT区間の中には、高雄の歴史を語る上で重要な古蹟のあるエリアや、かつての高雄臨港線の跡地一体もあります。特に郷愁心が強く、地元の歴史を大切にする高雄人の誇りを汚さぬためにも、やはり緑の軌道が望ましかったようです。

 その「緑化」により図らずも、高雄の新しい「映えスポット」になった場所もあります。

 それが通称「トトロトンネル(龍貓隧道)」です。2022年に開通した区間の美術館〜内惟藝術中心間の木々の中をLRTが走る姿が「『となりのトトロ』に出てくる木のトンネルに見える」と言われ、一時は台湾中だけでなく、日本からもこの「トトロトンネル(龍貓隧道)」を撮影しにくる人が多くいたそうです。

 今はそのブームも落ち着きましたが、先日筆者が現場に行き、実際に撮影した際は確かに圧巻で、しかしどこか穏やかでもあり、改めて「高雄のLRTって、なんだか可愛くて良いなぁ」と思いました。

 筆者のかつての高雄に対するイメージは「蒸し暑く、クルマやバイクの運転が荒っぽい」「(失礼ながら)台北より古い感じがする」でしたが、このLRTの登場により、印象が大きく変わりました。今ではむしろ、台湾の経済都市の中で環境への配慮が最も高く、そして未来への持続可能性も最も高い街……それが高雄のように感じます。

 もちろん旅行者も気軽に利用できますので、高雄を訪れる方はぜひ利用してみてください。LRTの窓にゆっくり流れる穏やかな時間は、移動そのものが観光になることウケアイです。