経済優先、危うい「G2」=トランプ氏、台湾問題には無言―9年ぶり訪中終了

AI需要 電子部品の需給ひっ迫へ

 【北京時事】トランプ米大統領は、約9年ぶりに北京を訪れ、対中関係の「安定」を優先させる姿勢を鮮明にした。習近平国家主席による9月訪米の日程も固め、米中接近が加速する印象だ。ただ、台湾問題など国際秩序の維持を主張せず、米経済の利益を求める見せ掛けの「G2」は危うさをはらんでいる。
 ◇苦境の中の訪問
 「偉大な指導者だ」。トランプ氏は14、15両日の北京滞在中、習氏をこうたたえて何度も持ち上げた。15日には習氏と並んで座った席で、中国と「素晴らしい貿易合意」に達したと成果を誇ってみせた。ただ、最重要議題の一つだった貿易問題で包括的な「ディール(取引)」はなく、トランプ氏が得意とする特定分野の商取引にとどまったもようだ。
 トランプ氏が対中貿易戦争から「安定」へかじを切った背景には、経済的な相互依存が武器化されるリスクがある。中国によるレアアース(希土類)の輸出規制の強化に対して、トランプ政権は対抗手段がなかった。今年に入り、連邦最高裁が相互関税に違憲判断を下すと、圧力の「カード」も事実上失った。
 政権のレームダック(死に体)化を左右する11月の中間選挙を前に、対イラン攻撃やガソリン価格高止まりで、トランプ氏の支持率は大きく低下している。イランとの停戦交渉が難航する中、イランとの深いつながりを持つ中国への訪問は一段と重みを増していた。
 ◇偉大な二つの国
 習氏は首脳会談で、イランに武器を送らないと約束したとされる。一方で、台湾問題について「処理を誤れば衝突する」と強く警告した。トランプ氏は記者団からやりとりを問われても、無言を貫いた。中国に対して台湾や日本に繰り返している威圧的行動の自制を求めることはなかった。いつもとは打って変わった姿からは訪中の「成功」に賭けるトランプ氏の切望がにじみ出た。
 「偉大な二つの国、私はG2と呼んでいるが、歴史上、極めて重要な瞬間として刻まれるだろう」。トランプ氏は14日、習氏との会談後にFOXニュースとのインタビューに応じ、会談の意義をこう強調した。習氏の9月訪米を含め、米中両首脳は年内に3回、国際会議を含めて顔を合わせる機会がある。
 ただ、「G2」は米中二大国でルールを重視して国際秩序を主導・共同管理するというのが本来の意味で、トランプ氏が掲げる「米国第一主義」とは両立しない。中国も自らをグローバルサウス(新興・途上国)の代表と位置づけており、国際社会に責任を負いたくないという立場だ。
 米中間の根本的な対立構造が解消されないまま、トランプ、習両氏が安定を図るのは、近い将来に訪れる可能性がある対決局面に備えた「時間稼ぎ」との指摘もある。 
〔写真説明〕15日、北京・中南海で写真撮影に応じるトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席(AFP時事)