「10円玉」を転がすのと同じ原理!? バイクのタイヤが平らでない理由 転倒を防ぐ驚きの技術

成長局面を迎える日本の電子部品

四輪車のタイヤとは対照的に、バイクのタイヤは断面が丸みを帯びています。車体を大きく傾けて曲がるバイクならではの理由と、走行を支えるタイヤメーカーの技術について「なぜなに」形式で解説します。

傾けて曲がるための必然! 断面を丸くする設計の秘密

 車のタイヤは、地面に対して広い面積で安定して接地するように設計されていますが、バイクのタイヤを後ろから観察すると、断面がラグビーボールのように丸みを帯びていることがわかります。なぜこれほど対照的な形をしているのでしょうか。

 その大きな理由は、バイクが「車体を傾けて曲がる」乗り物だからです。

 二輪車は、タイヤに「キャンバー角(傾き)」を与えたときに発生し、旋回方向へ働く力(キャンバースラスト)を積極的に使って曲がります。

 このため、二輪車用タイヤは乗用車用タイヤに比べて大きなキャンバー角が取れるよう、断面がラグビーボールのような丸い形状に設計されています。

 タイヤメーカーのブリヂストンでは、この仕組みを「10円玉のような円盤を傾けて転がすと、傾けた方向へ曲がっていく」イメージで説明しています。

 こうしたキャンバースラストを安定して引き出すために、二輪車用タイヤは乗用車用タイヤに比べて断面が丸い形状とされ、タイヤが傾いても接地面積が大きく変化しないように設計されています。

接地の安定を保つ工夫とハイテクな「コンパウンド」の役割

 バイクのタイヤが丸いのには、走行中の安全を確保するという目的もあります。四輪車が広いトレッド面で安定して接地することを基本とするのに対し、二輪車は常にバンク角が変わる環境で走行します。

 そのため、二輪車用タイヤはバンク角の変化に応じて接地位置や荷重のかかり方が滑らかに移り、グリップ力の変化が唐突に起こらないよう設計されています。

 接地が不安定になるとグリップ力が上下してしまい、転倒などの危険につながりかねません。丸い断面形状は、どのような傾き加減であっても常に安定したグリップを保つための工夫のひとつなのです。

 さらに、この独特な形状を活かすための最新技術も投入されています。たとえばミシュランは、一つのタイヤの中で場所によってゴムの硬さを使い分ける「2CT」という技術を紹介しています。

 これは、直進時に主に接地するトレッド中央部には耐摩耗性を高める硬めのコンパウンドを採用して長寿命を狙い、コーナリング時に接地するショルダー部には柔らかいコンパウンドを使用してグリップ力を高めるという考え方です。

 このように、バイクのタイヤの「丸さ」には、物理現象を味方につけて安全かつスムーズに曲がるための設計思想が詰まっています。

 次にバイクを見かけたら、その足元にある丸い断面形状に注目してみると、より深く「乗りものの不思議」を感じられるかもしれません。