熊本県八代市の庁舎建設を巡る汚職事件で、市職員らが業者の選定基準などに強い違和感を抱いていた様子が、関係者への取材や市議会調査特別委員会(百条委員会)の証言などから浮かび上がる。ある職員は当時を振り返り、「怖くて手が震えた」などと話した。
新庁舎の建設に携わった市職員によると、同市は入札に際し、過去の実績などを踏まえ、応札できる業者のリストを内部資料として作成していた。ただ、これを見た成松由紀夫容疑者(54)から「前田建設工業が入ってない」と指摘されたという。職員は「全然知らないゼネコンだった」と振り返った。
新庁舎建設の不正疑惑を巡り、市議会が設置した百条委で、当時の担当課長は「(同社は)一度も営業に来たことがなかった」と証言した。
「天から降ってきた。一字一句変えるな」。別の市職員は、業者選定のため、本来は現場の担当者が話し合って決める評価項目の配点などの基準案を、突然、上司から手渡されたと明かした。これを基に応札資格のある業者を調べると、同社に極めて有利な案だと分かり、先輩に「もう手を引いていい?私恐ろしか。初めて手が震える仕事だ」と伝えた。その後、一部項目の配点が変更されたが、同社に有利であることは変わらなかった。
「天から降ってきた」と言ったとされる上司は百条委で、「覚えていない」と説明。基準案については「誰が作ったか分からない」としつつ、「当時の副市長か財務部長から渡された。変えたくても変えられなかった」と後悔を口にした。
百条委には、20年1月に当時の複数の市幹部らが集まり、一連の経緯などについて話した際に録音されたとみられる音声データも参考資料として提出された。
時事通信がこれを入手したところ、「どう考えても不自然」「もともと、もうシナリオが出来とったかな、最初から」などの会話が交わされていた。「なんで成松さんは(前田建設に)こだわらしたとだろか」といった発言もあった。