高市政権が社会保障と税の一体改革の「本丸」と位置付ける給付付き税額控除を巡り、超党派の「社会保障国民会議」の議論が本格化している。制度の主眼は働く中低所得層の負担軽減に置き、個人単位で支援する方向だ。給付だけの簡易な形で早期導入すべきだとの声も強まっている。
給付付き控除は、減税し切れない差額を現金給付することで、非課税世帯や納税額が少ない就業者を支援できる制度。米国などに導入例がある。制度を考える上で注目されているのが、世帯収入に応じた社会保険料や税の負担率を示すグラフだ。国民会議の下に設置された有識者会議に参加する翁百合・日本総合研究所シニアフェローが分析したもので、通称「翁カーブ」と呼ばれる。
児童手当や生活保護といった給付を負担から差し引いた額が世帯収入に占める割合を比較。年収540万円程度までは、日本の共働き子育て世帯の負担率が経済協力開発機構(OECD)平均を上回る。特に負担が重いのが年収300万~400万円程度の世帯で、消費税を加味した負担率でも同様の傾向を確認。保険料負担が重く、低所得者への給付が手薄であることが浮き彫りになった。
有識者会議はこれを踏まえ、中低所得勤労者の負担軽減と就労促進を給付付き控除の目的とすることを確認。社会保険料や税を負担する個人ごとに支援すべきだとの意見が多くを占める。世帯単位としないのは、配偶者の働き控えを防ぐためだ。
勤労所得に応じて支援額を増やし、一定の所得に達すると減らす仕組みを検討する。仮に夫婦が同額の収入を得ているなら、個人年収100万円台後半~200万円台前半程度が支援の射程に入る。年金受給者や生活保護受給者は対象から外れる方向だ。
高市政権は、食料品の消費税率を2年間ゼロとし、その後に給付付き控除に切り替える構想を掲げる。ただ、給付付き控除は過去にも導入が検討され見送られてきた経緯がある。金融・不動産を含めた所得や資産の正確な把握が難しいことが理由だ。このため有識者会議では、精緻な制度は将来の検討課題とし、年末調整や確定申告などで分かる給与所得に基づく簡易な給付から導入する案が有力となっている。
とはいえ課題は残る。簡易型給付でもシステム整備には2~3年を要するほか、自治体は事務負担を警戒する。実際の支援額や対象の絞り込みも容易ではない。国民会議は夏前の取りまとめを目指すが、有識者からは、最後は「理屈ではなく政治的判断になる」との声も漏れる。