「自然」「安全」両立へ模索=携帯基地局、計画見直し―北海道・知床

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 観光船事故をきっかけに、世界自然遺産・知床半島では携帯電話の不通地域解消の機運が高まった。ただ、携帯基地局の整備事業は、環境保護の観点から見直しを余儀なくされ、地元関係者は「自然と(海の)安全のバランスをどう取るか」と頭を悩ませる。
 小型旅客船「KAZU I(カズワン)」の事故では、船長の携帯電話がつながらなかった。事故後、国は半島の東西に位置する北海道羅臼町と斜里町で複数の基地局を整備する計画を主導。半島先端の知床岬では2025年春に供用開始となるはずだった。
 ところが、電源設備として大規模な太陽光パネル敷設を伴うことが明らかになると、環境保護の観点から見直しを求める声が相次いだ。国は24年10月、知床岬での整備中止を表明。羅臼町のニカリウス地区での計画も一時凍結され、代わりに人工衛星網による高速通信サービス「スターリンク」の実証実験が進む。
 新技術の実用化が進めば、基地局整備の意義は薄れる。道内の自然保護団体の代表は「稚拙な計画だった。工事をすること自体が大問題で、歯止めが利かなくなる」と憤る。羅臼町の担当者は「当初は基地局が最良の方法だった」としつつ、「衛星でスマートフォンの通話が可能になれば基地局は過剰整備だったとなる」と語った。
 昨年9月の実証実験では、漁船や観光船計7隻にノートパソコンほどの大きさの機材を搭載し、羅臼側の海域でスマホを使った文章や写真の送受信などをテストした。地元漁師からは「使い心地は悪くなかった」との声が聞かれたが、羅臼町側は費用など基地局の方が優れている面もあると指摘。今後、実証実験の結果を踏まえ、どちらが最適かを国が判断する。
 羅臼周辺ではコンブ漁の小型船が多く操業し、通信手段がない船も多い。町の担当者は「自然保護のコストとして地元が不便を強いられている」と話す。「世界遺産の町として自然を保護するのは大事だが、そのために人の命や財産をないがしろにはできない。(海の)安全確保への理解が進んでほしい」と複雑な心境を明かした。 
〔写真説明〕北海道・知床半島の知床連山と知床五湖(下)=2022年4月(時事通信チャーター機より)