因縁のライバル「ボーイング」と「エアバス」の“兄弟製品”とは? 自衛隊が“どっちも採用”なるか!? どっちがスゴいのか

注目 最先端半導体支えるEUV技術

陸上自衛隊で広く使われているUAS「スキャンイーグル」の開発者が設立した別の会社が、新たなUASを開発しました。それらはボーイングとエアバスというライバル同士から発売。「兄弟機」といえる両機が、日本でも使われるのでしょうか。

元はマグロ漁用!? 陸自UAS「スキャンイーグル」の出自

 今では自衛隊で広く使われているUAS(無人航空機システム)ですが、その本格配備を促したきっかけは、2011年3月11日の東日本大震災でした。東京電力福島第一原子力発電所での事故に際し、陸海空三自衛隊は、オペレーターが被爆のリスクを冒すことなく、電子機器に異常が生じる可能性の高い高濃度放射線環境下で運用できるUASを保有していませんでした。

 この反省と教訓から、日本政府と防衛省は2011(平成23)年度補正予算で、ボーイング・インシツが開発と販売を行っているUAS「スキャンイーグル」を試験導入。その後2019(平成31)年度から、スキャンイーグルを大型化して、ペイロード(搭載)重量の増加や電力供給能力の強化、機内ネットワークのイーサネット化などの改良を加えた「スキャンイーグル2」を「UAV 中域用」の名称で導入を開始しました。

 スキャンイーグルは2024年の時点で北部方面隊に3個、東北方面隊に1個、中部方面隊に1個、西部方面隊に2個の計7個隊と、陸上自衛隊情報学校に配備されており、もはや陸上自衛隊にとって欠くことのできない戦力となっています。

 防衛省・自衛隊がスキャンイーグルを試験導入した2011年の時点で、既に同機はアメリカ海兵隊などによって海賊や麻薬組織、テロリスト集団などを対手とする「非正規戦」で実績を積んでいました。

 このため純粋な軍用UASと思われがちなスキャンイーグルですが、実のところ原型となったUAV(無人航空機)「シースキャン」の開発にあたったスタートアップ企業のインシツは、その名が示すように、マグロなどの魚群を捜索する目的で開発したのでした。

ボーイング子会社となったインシツ 開発者は離脱

 2004年にアメリカ海兵隊がシースキャンをベースにしたスキャンイーグルの試験運用を開始したところ、当初見込み以上の実績を上げました。その後インシツは、長年にわたって親密な関係にあったボーイングの子会社「ボーイング・インシツ」となり、スキャンイーグルシリーズやその発展型「ブラックジャック」は同社の製品となりました。

 しかし、スキャンイーグルの開発を主導したテッド・マクギア博士はボーイング・インシツから離脱し、エアロベルという会社を設立します。そこでスキャンイーグルと同クラスのISTAR(情報・監視・目標補足・偵察)用UASの開発に乗り出しました。

“弟分”はエアバス製VTOL機

 スキャンイーグルはカタパルトを使用して発進し、クレーンから吊るされたネットに機体が飛び込む「スカイネット」と呼ばれる装置によって回収されます。2022年7月6日付の「ドローン・ネットワーク・ニュース」の記事によれば、マクギア博士はこの発進・回収装置の大きさが運用上の制約になると感じていたようです。

 マクギア博士の考えを反映してエアロベルが開発した「フレックスローター」は、機首部に情報収集用センサーターレットを装備している点と電動UASである点はスキャンイーグルと共通しているものの、機首後方のローターで垂直離着陸と飛行を行うVTOL(垂直離着陸)機です。

 スキャンイーグルはヘリコプター甲板を備えていない船舶からの運用が可能で、その点がヒットした理由の一つですが、フレックスローターの離発着に必要なスペースは3.7×3.7mとさらに小さく、スキャンイーグルより狭い環境や小型の船舶でも運用できます。

 理由は明確になっていませんが、エアロベルは2024年5月にエアバスのヘリコプター部門であるエアバス・ヘリコプターズに買収されており、フレックスローターは現在、エアバスの商品となっています。

陸自で「兄弟機」が翼を並べる日は来るか

 海上自衛隊はヘリコプター甲板を持たないさくら型哨戒艦で運用するため、フレックスローターと同じVTOL型UAS「V-BAT」を導入しています。このためフレックスローターの海上自衛隊からの採用は早急には期待できそうもありません。

 他方、エアバス・ヘリコプターズはエアロベルを買収したメリットを活かして、フレックスローターを有人ヘリコプターH145から制御する実験にも成功しています。同社は陸上自衛隊や海上保安庁などの法執行機関、送電線などの大規模インフラを管理する企業などに対して、フレックスローターの高いVTOL性能と、有人航空機から制御できる拡張性を前面に出して提案を行っているという話を、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は耳にしています。

 前に述べたようにスキャンイーグルは発進にカタパルト、回収にスカイフックをそれぞれ使用します。これらの装置は車載可能で、陸上自衛隊の車両で牽引できるのですが、この車両が道路交通法の規定に適合していないため、大型トラックに車両ごと搭載して移動しているという話があります。

 この話の真偽のほどは定かではありませんし、陸上自衛隊がISTAR用UASにスキャンイーグルより高い運用柔軟性と戦略機動性を求めているという事情などもあるとは思いますが、陸上自衛隊の中にはVTOL型UASを求める声も少なからずあるようです。

 仮に陸上自衛隊がVTOL型UASを導入することになれば、フレックスローターはその有力な候補の一つになり得ると思います。ともにテッド・マクギア博士が開発を主導し、ボーイングとエアバスにとって血を分けた兄弟機とでも言うべきUASが、翼を並べてISTAR任務にあたる日が来るのかもしれません。