20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が16日、米ワシントンで開かれる。中東情勢の悪化で世界経済の下押し懸念が高まる中、対応を協議する。先進7カ国(G7)を中心に重要鉱物のサプライチェーン(供給網)の多様化についても議論する。元財務官で三井住友銀行国際金融研究所の古沢満宏理事長と、亜細亜大の久野新教授に話を聞いた。
◇インフレと成長鈍化、中心議題に=古沢満宏・元財務官
―世界経済の見通しは。
中東情勢の緊迫化による原油高で原料価格や輸送コストが上がるため、インフレが進み経済成長は減速するというのが一般的な見方だ。状況が刻一刻と変わる中で影響の大きさは見通しづらいが、仮に戦闘が終結したからといってすぐには元の成長軌道には戻らないだろう。
―G20議長国の米国は議題を絞り込む。
G20はもともと財務相・中央銀行総裁会議として1999年にスタートし、世界経済や経常収支の不均衡を議論する場だったので、原点に戻るのはよい方向だ。今回は世界的なインフレと成長鈍化が最大の関心事項になるだろう。定期的に集まり、意見をすり合わせることは意味がある。
―円安が進行している。
原油高で日本の国際収支が悪化する可能性や、日米の金利差、有事のドル買いなどいろいろな要因がある。日本の潜在成長率が相対的に低い状態が続いており、円が買われにくい。持続可能な財政の下での成長戦略が実を結べば、時間はかかるが徐々に円高方向へ行くだろう。
―原油先物市場への介入案が浮上した。
過去に検討の俎上(そじょう)に載ったことは知る限りない。仮に原油先物に介入したとして、どれだけ効果があるのかは疑問だ。
◇政策協調に向けた一歩を=久野新・亜細亜大教授
―中東情勢が世界経済に与える影響は。
景気後退とインフレが同時に起こるスタグフレーションを回避できるかどうかの瀬戸際だ。戦闘が長期化すると輸送や生産コストが上がるだけでなく、供給網と生産活動が止まる恐れもある。ドル高も重なり、途上国を中心に食料不安や債務危機など大きな混乱がもたらされかねない。
―G20財務相会議の議論の見通しは。
一連の混乱を起こした議長国の米国が言うことに他国が本音で共感できるかはやや疑問だ。G7ほどの信頼関係が構築できておらず具体的な成果は期待できないが、例えば石油製品の不要不急の囲い込みをしないといった認識の共有だけでも意味はある。政策協調に向けた一歩を踏み出せるかが問われる。
―重要鉱物の供給網強化がG7で議論される。
資源の武器化に対し、歩調を合わせて断固として対応するというメッセージを中国を含む国際社会に発信し続けることは非常に重要だ。
―中国を念頭にレアアースに高関税を課す案が浮上している。
中国の安値攻勢や輸出制限にも耐えられる市場をつくる狙いだ。世界貿易機関(WTO)協定上はグレーだが、供給網混乱のリスクと提訴されるリスクのどちらを取るかという選択問題だ。
〔写真説明〕インタビューに応じる古沢満宏元財務官=6日、東京都千代田区
〔写真説明〕インタビューに応じる亜細亜大国際関係学部の久野新教授=8日、東京都中央区