【サンパウロ時事】25日投開票のブラジル大統領選の決選投票では、国民の約5割を占める中間層の動向がカギを握る。格差是正を重視する左派のルラ大統領(80)は、貧困層から根強い支持を集めるが、中間層では右派のフラビオ・ボルソナロ上院議員(45)に後れをとる。その背景には、現政権の経済政策や物価高に対する不満がある。
ブラジルの中間層は経済成長を背景に、過去25年で約15%増加。社会福祉政策の充実で貧困層が減ったのはルラ氏の功績の一つだ。貧困家庭向けの現金給付を受けるイングリジ・サントスさん(24)は「政府の支援のおかげで、栄養のある食事が取れるようになった。子どもの人生は確実に良くなっている」と話す。
ルラ氏は「国家予算に貧困層(支援)を組み込むことは可能だ」と強調し、再分配政策を継続・拡大する意向だ。対するフラビオ氏は、既存の社会福祉策は維持するものの「制度の管理改善、ゆがみの是正、不正の撲滅」を行うと主張。歳出削減や、労働者層の減税を目指すとしている。
国民の多くが、一段高い所得階層に移動したものの、好景気の実感は乏しい。ルラ政権下での年間インフレ率は4%台で推移。全体としては抑制されているものの、電気代や住居費の上昇幅が大きく家計への打撃になっている。9月に発表されたクエスト社の世論調査によると「1年前と比較して景気は悪化した」と回答した人は49%で、「改善した」の19%を上回った。物価高の影響が大きく、「賃金の伸びが、物価の伸びを上回っている」と答えた人は10%にとどまった。
ハウスクリーニングを仕事にするファティマ・シルバさん(58)は、中間層の一人。ショッピングモールで働く孫のグスタボさん(19)との2人暮らしで、世帯月収は4000レアル(約12万6000円)程度だ。
物価高は、シルバさんの家計の大きな負担となっている。家で使用するプロパンガスの値段は、2年で5割以上上がった。嗜好(しこう)品のチーズは買えなくなり、バターはマーガリンに。料理用の油や米も、お気に入りのブランドから安いものに切り替えたという。
「貧困層支援は重要だが、現政権は再分配を重視しすぎている」と指摘。選挙でどちらの候補が勝ったとしても、次の政府には「物価高対策を優先してもらいたい」と話した。
〔写真説明〕ルラ大統領(左)とフラビオ・ボルソナロ上院議員(AFP時事)
〔写真説明〕イングリジ・サントスさんと2人の子ども=8月16日、ブラジル・サンパウロ
〔写真説明〕値上がりした食品を手にするファティマ・シルバさん=18日、ブラジル・サンパウロ
〔写真説明〕自宅前に立つファティマ・シルバさん=18日、ブラジル・サンパウロ