トラブルを受けて長期運休中のSL列車が、復活に向けて動き出したことが分かりました。
脱線事故で2026年は全列車運休
日本を走る代表的な蒸気機関車(SL)の一つで、「関東の奥座敷」の水上温泉(群馬県みなかみ町)などに観光客を呼び込んできた観光列車「SLぐんま」。2025年8月3日の運行を最後に運休してきましたが、今後の計画が判明しました。
「SLぐんま」はいずれも高崎(高崎市)を発着する3区間が設定されており、上越線の水上(みなかみ町)、信越本線の横川(安中市)、両毛線の桐生(桐生市)を結んでいます。うち高崎~水上間の列車名は「SLぐんま水上」などで、SLは水上駅構内の転車台で方向転換します。
一方、残る2区間の終点の横川、桐生には転車台がありません。折り返し運行のため、ディーゼルエンジンで発電した電気でモーターを回して走る電気式気動車の事業用車両GV-E197系を併結します。それぞれの列車名は「GV・SLぐんま横川」、「SL・GVぐんま桐生」などで、SLとGVを併記しています。
「SLぐんま」は、1940年製の「D51形498号機」と、1949年製の「C61形20号機」の2機体制となっています。いずれも高崎発着なのは「東京から上越新幹線で訪れる観光客の利用促進のため」(JR東日本関係者)とされ、群馬県に観光客を呼び込む“客寄せパンダ”として重要な役割を担ってきました。
ところが、D51形498号機は2025年夏季の運転初日となった7月19日に故障し、復帰に向けて試運転中だった同年9月4日、みなかみ町の上越線で脱線。結局、2025年7月19日を最後に、営業には使われていません。
一方、C61形20号機は2025年8月3日まで運用していましたが、大宮総合車両センター(さいたま市)での大規模な検査に入ったため不在となっていました。このため、2026年はSL列車が全く走らない異常事態となりました。
ピンチヒッターとして全面的にかり出されたのがGV-E197系です。12系客車をつないで高崎~横川間を走る「GVぐんま横川」や、高崎~水上間で旧型客車を引っ張る「GVレトロぐんま水上」などが一部日程に運行されてきました。
しかしながら、見た目が「まるで物置のよう」などと揶揄されるGV-E197系はJR東日本関係者も「SLに比べて集客力が明らかに弱い」と認めます。
SLの存在感の大きさが再認識されている中で、ついに“真打ち”が戻ってくることが明らかになりました。JR東日本幹部が筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)に対し、「SLぐんま」の再開計画を口にしました。
「GVだけ」になってしまった経緯
SLが離脱する原因となったのが、前出した2025年7月19日に起きたD51形498号機の故障でした。高崎駅から信越本線横川駅へ向かう快速「GV・SLぐんま横川」は先頭のGV-E197系が牽引し、3両の12系客車を挟んだ最後尾にD51をつなぎました。
高崎を出発後、本来は回っていなければならないD51の動輪が止まったまま引きずられました。このトラブルを受け、列車は最初の停車駅である安中(安中市)で運転を打ち切りました。
翌日の2025年7月20日に高崎から横川へ向かった「GV・SLぐんま横川」と、横川から高崎への「SL・GVぐんま横川」は予定していたD51に代わってC61形20号機を連結。同年7月26、27両日と8月2、3両日に高崎~水上間を往復した「SLぐんま水上」もC61をつなぎました。
しかし、C61は検査周期が来たため大宮総合車両センターへ向かいました。これでD51を含めたSLが戦線を離脱する事態に追い込まれました。
対策としてJR東日本は2025年8月、故障したD51の輪軸を取り外し、車輪の外周を削って所定の形状に整える「踏面削正」を実施。運転再開に向けて試運転に乗りだし、JR東日本幹部は当時「2025年秋にも『SLぐんま』の運転を再開できる可能性がある」との期待感を示しました。
そんな矢先に、泣き面に蜂と呼ぶべき事態に陥りました。
「SLぐんま」再開へ
試運転のため高崎から水上へ向かっていたD51形498号機と5両の12系客車が2025年9月4日、上越線後閑―上牧間で脱線したのです。試運転のため乗客はおらず、乗務員9人にけがはありませんでした。
事故原因を調べている国土交通省の運輸安全委員会が2026年8月27日公表した経過報告によると、脱線時にD51の炭水車で「顕著な輪重アンバランス」が生じていました。
脱線事故を受け、2025年9~11月に予定していた「SLぐんま」の全列車が運休。2026年に出動しているのはGV-E197系を使った列車だけで、「SLぐんま」は1本も設定されていません。
そんな中で、検査を受けていたC61形20号機が2026年10月に大宮総合車両センターから出場しました。JR東日本幹部は筆者に対して「2027年春にも営業運転を再開できる見通しだ」と語り、試運転が順調に進めば2027年春にもC61を使った「SLぐんま」を復活させる計画を明言しました。
一方、この幹部は脱線したD51形498号機について「運輸安全委員会の原因究明などの調査が続いているため、当社としては全く触ることができない」と説明。D51は調査終了後の落ち着いた段階で「修理し、『SLぐんま』をC61との2機に戻したい」との方針を示しました。
当面は現場復帰するC61の1機となりますが、2027年に「SLぐんま」の運転が再開されれば水上温泉などの沿線の観光地が盛り上がるのは請け合いです。群馬県にSLの汽笛が再び響くようになるのが楽しみです。