水爆攻撃にも耐える元核シェルターを転用したデータセンターがスウェーデンにあります。なぜ今、こうした“要塞”のような施設が注目されるのでしょうか。
浮き彫りになった「社会の心臓部」の弱さ
私たちの生活や企業活動に欠かせないインターネットサービス。その心臓部ともいえる「データセンター」が2026年10月に攻撃される事態が発生しました。もし日本の施設が狙われたら、私たちの生活はどうなるのでしょうか。こうした不安に応えるかのように、スウェーデンには「世界で一番安全」といわれるデータセンターが存在します。その驚くべき実態に迫ります。
10月8日から11日にかけて、ウクライナはロシアのIT大手ヤンデックス社が持つ3か所のデータセンターをドローンで攻撃しました。これは、ロシアがウクライナの通信インフラなどを攻撃したことに対する報復であったとウクライナは発表しています。
この攻撃により、ヤンデックスが提供する配車アプリやフードデリバリー、オンライン決済、メールといった生活に直結するサービスで大規模な障害が発生。その影響はロシア国内だけでなく、中央アジアやカザフスタンにも及びました。
スマートフォンアプリから企業の受発注システム、金融サービス、そして利用が急増するAIまで、多くのサービスは「クラウド」と呼ばれるITインフラによって提供されています。そのサーバーやネットワーク機器が集中的に置かれているのがデータセンターです。今回の攻撃は、経済活動の心臓部であるデータセンターの脆弱性を浮き彫りにしたといえるでしょう。
政府や民間を問わず防衛意識が高いことで知られるスウェーデンに、世界で一番安全といわれるデータセンターがあります。首都ストックホルムの中心部からほど近い、住宅地の小高い岩山の公園。その地下30mに、その施設はあります。
この施設はもともと、第二次世界大戦中の1943年に花崗岩の岩盤をくりぬいて建設された強固な防空壕でした。花崗岩が白いことから「ホワイトマウンテン」と呼ばれ、冷戦時代には核シェルターとして利用されていました。驚くべきことに、その入口には水爆の攻撃にも耐えられるよう、厚さ40cmもの鋼鉄製のドアが設置されています。
環境にも配慮した“最強要塞”
冷戦終結で核シェルターとしての役割を終えたこの施設に、インターネットプロバイダのバーンホフ社が着目。強固な構造を活かし、「ピオネ・ホワイトマウンテン・データセンター」を建設しました。
このデータセンターは、堅牢なだけでなく設備もユニークです。データセンターに不可欠な冷却システムとバックアップ電源用の発電機には、なんと潜水艦用のディーゼルエンジンが使われています。さらに、データセンターから発生する廃熱を地域暖房の熱源として再利用しており、環境に配慮している点もスウェーデンらしいといえます。
大都市の真ん中という便利な立地に加え、施設全体の堅牢性と冗長性を備えていることから、ピオネ・ホワイトマウンテンは多くのネットワークプロバイダに利用され、北欧全体のネットワークハブとしても機能しています。
日本のデータセンターでは、これまで耐震性や台風、豪雨といった自然災害への対策が重視されてきました。しかし、緊張度を増す国際情勢を鑑みれば、今後はドローン攻撃のような事態にも耐えうるデータセンターが求められるのかもしれません。
スウェーデンの「ホワイトマウンテン」は、そのお手本になるのではないでしょうか。