「一時停止はいりません」秋田港近くの“ナゾ踏切”なぜ存在? レールは敷いてあるのに…→その経緯とは

空き家の85%、1年後も空き家

秋田港の近くで、レールが道路を横切っているのに「踏切前一時停止必要ありません」と表示された場所を見つけました。警報機も黒いシートで覆われています。かつてここを走っていたのは、港の貨物に加え、クルーズ船の乗客も運んだ珍しい路線でした。

線路が残っているのに「一時停止不要」?

 秋田市の秋田港近くを歩いていると、使われなくなったように見える踏切がありました。道路を横切るレールは残っていますが、警報機の灯火には黒いシートが掛けられています。そばに立つJR貨物の表示には「踏切前一時停止必要ありません」の文字。レールがあるのに、なぜ止まらなくてよいのでしょうか。

 ここは、かつての「石油化学踏切」です。秋田臨港警察署によると、この踏切を含む秋田港線の4カ所の踏切は、2026年9月1日に廃止されました。このため、踏切直前での一時停止は不要です。ただし、道路にはレールによる段差が残っており、警察は速度を落として通行するよう呼びかけています。

 踏切の廃止に先立ち、ここを通っていた鉄道も廃止されました。土崎駅と秋田港駅を結んでいた「秋田港線」は、2026年7月1日付で廃止。その2カ月後、レールが道路を横切るこの場所も、踏切としての役割を終えたのです。

「秋田港線」はナニモノ?

 秋田港線は、奥羽本線から分かれて港へ向かう全長1.8kmの支線でした。開業は1907年。港に関係する貨物を運び、秋田港駅では秋田臨海鉄道とも接続していました。化学薬品や紙製品などが主な輸送品目でした。

 貨物線として造られたこの路線には、後年、旅客列車も走るようになります。2017年8月から、秋田港に寄港するクルーズ船の乗客を運ぶため、JR東日本が秋田港駅と秋田駅の間で列車を運行しました。貨物を運ぶための支線に、船から降りた観光客を乗せる列車がやって来るという、秋田港線ならではの光景でした。

 一方、定期貨物列車は2021年3月に運行を終了。その後もクルーズ船客向けの列車が走っていましたが、こちらも2025年度で運行を終えました。JR貨物は、貨物列車の運行に見合う需要が引き続き見込めないことも踏まえ、秋田港線を廃止しました。

 港の貨物を運ぶために生まれ、最後は港に着いた人を運んだ線路。現地には警報機もレールも残っています。しかし、「踏切前一時停止必要ありません」という表示は、1907年から続いた路線が役目を終えたことを、道路を通る人にも知らせています。