大分県の三浦造船所で、日本初となる交換式コンテナ蓄電池を用いたEV内航コンテナ船「たかさご」が進水しました。
日本初!「EVコンテナ船」が誕生
内航コンテナ船最大手の井本商運(神戸市)は2026年10月8日、大分県佐伯市の三浦造船所で200TEU型EV(電気推進)内航コンテナ船「たかさご」の命名・進水式を行いました。日本初となる「交換式コンテナ蓄電池」を用いたゼロエミッション航行が可能なコンテナ船です。
井本商運の井本隆之社長は「『たかさご』のEVシステムが未来の内航海運に利用され、環境問題に貢献することを願っている」と期待感を示しました。
今回、進水した「たかさご」はGHG(温室効果ガス)の排出を大幅に削減するため、大容量蓄電池とディーゼル発電機を組み合わせて推進用の大型モーターを駆動させるシステムを採用したハイブリッド型のEVコンテナ船です。基本設計と電気推進システムは三菱重工業グループの三菱造船が、システムの取りまとめは寺崎電気産業が行いました。
全長は82.22m、全幅は13.8m、深さは6.6m。総トン数は509トンでコンテナの積載本数は227TEU(20フィートコンテナ227個ぶん)となっています。ヤンマー製の発電機(6NY16L-EW)3台とラメル(Ramme)製の推進モーター(出力370kW)2基を搭載し、最大12.2ノット(約23km/h)の速力で航行が可能です。
また、船内電池として容量250kWhのリチウムイオン電池を2台積むほか、交換可能な20フィート型コンテナ電池を3台、ホールド内に積載することができます。井本社長は「このコンテナ型バッテリーを積み替えて、航行していこうと考えている」と説明します。
満充電のバッテリーをポン付けして“ゼロエミ!”
井本商運は再生可能エネルギー由来の電力を調達してコンテナ型バッテリーに充電し、それを「たかさご」の推進に使うことを計画しています。これにより船の運航時のみならず、燃料の採掘・製造から使用までCO2(二酸化炭素)を排出しない完全ゼロエミッションを実現していく予定です。
例えば神戸でコンテナ型バッテリーを搭載し、ゼロエミモードで広島まで航行。広島港に入港すると船にプラグを挿してバッテリーへ充電するのではなく、コンテナを陸揚げし、充電済みのコンテナ型バッテリーと交換。再びコンテナ型バッテリーを使って航行し、神戸港に到着したら交換するという運用が考えられます。
就航当初はコンテナ型バッテリー1台と船内バッテリー2基で、出入港時や港内航行時のバッテリー単独運転からスタートします。
煙突無くしたらめっちゃ積める!?
さらに「たかさご」は、三浦造船所の三浦唯秀社長が「ファンネルレス、煙突が無い船になっている」と話す通り、非常に特徴的なデザインが取り入れられています。
電動化によって船舶設計の自由度が向上し、大型主機関や推進軸系、煙突に使用していたスペースを貨物積載や抵抗低減に有効活用できるようになりました。「今回の船は当社が初めて建造するEV船。進水後、海に浮かんで船体側面が見えると、非常にかっこいい船だと感じた」(三浦社長)
ブリッジを船首側に配置した「たかさご」では、503総トンという従来の同型船(130TEU)とほぼ同じ船体サイズでありながら、227TEUという既存の749総トン型コンテナ船「まや」に匹敵するコンテナ積載能力を確保しました。船尾に2軸プロペラに最適化した「バトックフロー」船型を取り入れているのも特長で、船体の水流抵抗を抑えることで省エネルギーでの運航を実現します。
実際にフェリーなどでバトックフロー船型の建造実績を持つ三菱造船の上田伸社長は「主機1つのエンジンルームだと実現できない。小型船でこの船型が成立したのはモーターだからだ。こういった造船所とのコラボレーションは我々としてはすごくやりたいところなので、非常に良い機会をいただいた」と述べていました。
また、ブリッジは航海に必要なモニターとコンソールを中央に集約し、座席を置いたコックピット型のデザインを採用。ジョイスティック式統合操船システムを搭載することで、若手航海士が操船しやすい性能を持たせています。
「船の操船は立ってやるものというイメージがあるがそれは違う。新卒の船員が増えている中で、こうしたコックピット型にすることで、若い船員が憧れる船を造っていくというのも取り組みの一つだ」(井本社長)
「たかさご」の竣工は2027年3月を予定。荷主はマツダロジスティクスで、神戸―広島間で主に自動車メーカー大手マツダ向けの自動車部品輸送を行います。自動車会社はCO2削減への感度も高いことから、ゼロエミッション運航可能なコンテナ船がさらに投入されればサプライチェーン全体のGHG削減にも寄与できるでしょう。
開発に携わったMarindowsの末次康将CEO(最高経営責任者)は同船を「第2世代型のEV船にして量産型モデル」と位置付けており、搭載したシステムをベースに第2船以降の建造も考えています。