「苦しい時間が多かった」福岡DF橋本悠が涙のJ1初ゴール「ターニングポイントに」

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 ネットを揺らした直後、両手で顔を覆った。まだ試合は終わっていないし、勝ちが決まったわけでもない。「正直、まだ泣くのは早い」と思いながらも、涙を止めることができなかった。「ここまで苦しくて、モヤモヤしていたぶん、得点でチームを一歩前進させられたことに、ちょっと感極まった」。アビスパ福岡のDF橋本悠は、涙のJ1初ゴールをそう振り返った。

 福岡をリーグ戦7試合ぶりの勝利に導く決勝弾だった。10日の2026/27明治安田J1リーグ第9節・ファジアーノ岡山戦、福岡は8分に先制したものの、61分に同点ゴールを許してしまう。スタジアムに「また同じ流れか……」という嫌な雰囲気が漂い始めるなか、途中出場の橋本がその空気を断ち切った。76分、味方のシュートを相手DFが弾いたこぼれ球に反応すると、右足で流し込んだ。

「今シーズン、自分の中でかなり苦しい時間が多かった。数字が早くほしい、ほしいと思っていたぶん、実らなくて。今日やっとほっとしました。いつも支えてくれる人たちのためにも頑張りたいと思っていたし、いろんな感情が込み上げてきました」

 百年構想リーグで4得点を挙げ、ゴールを決める喜びはすでに知っている。それでも、J1初ゴールにはまた違った喜びがあったのではないか。そう聞くと、橋本は顔をほころばせて答えた。「記憶には残っていたかもしれないですけど、やっぱり『J1初』が記録にちゃんと残ることが、とてもうれしいです」

 その笑顔の裏には、もがき続けた日々があった。福岡は前節までリーグ戦で6試合勝ちがなく、直近の天皇杯でも横浜FCに敗れ、なかなか浮上のきっかけをつかめずにいた。チームが停滞するなか、橋本は一人で考え込む時間が増えていったという。

「消化できるものと、できないこと、過去にあったものと、これから先につなげること。サッカーの面においても、選手としても、人としても。役割を与えられたなかで、何ができるかを考えることが多くて。いろんな先輩方に話しながら解消できる部分と、できなかった部分がありました」

 来る日も来る日も、自分に何ができるかを模索していた。モヤモヤした気持ちも「数字を残すことができたら、絶対解消される」と信じていたが、リーグ戦では前節から2戦連続でスタメンを外れ、焦りばかりが募っていった。「(プロ)1年目のときにゴールを決められなかったことにも、どこかで心残りがあった。だから、今年は早めに決めたいと思っていました。その急ぐ気持ちが、良くない方向に走ってしまった」

 現状を打開する糸口を探しもがくなかで、ようやく生まれた価値ある一発。これですべてが吹っ切れたわけではないが、「今日のゴールがようやく自分をもう一つレベルアップさせる、いいターニングポイントになるかなとは思ってます」と手応えを口にした。

 14日にはサガン鳥栖とのルヴァンカップ3回戦を迎える。鳥栖のアカデミーで育ちながら、トップチーム昇格を逃す悔しさを味わった橋本にとって、古巣との“九州ダービー”は特別な一戦だ。「かなり気合が入っています」と言葉に力を込め、こう続けた。「小さい頃からこのダービーに懸ける思いを分かっている。何がなんでも、勝たなければいけない」

 この日の一発で、橋本の気持ちが軽くなったのは間違いない。チームも待望の勝利を手にして、浮上のきっかけをつかんだ。あとは勢いそのままに、巻き返しの波に乗るだけだ。

取材・文=高尾太恵子

【動画】橋本悠、涙のJ1初ゴール