防衛省が民間輸送船の自動運航調査に着手。有事の物資輸送や住民避難に不可欠な民間船の活用と、船員の安全確保・人手不足解消を狙います。「MEGURI2040」や海自哨戒艦の無人化構想と併せて解説します。
有事の島嶼防衛に「民間船の補完」は不可欠 防衛省が自動運航の調査へ
防衛省は2026年7月に発表した「令和9(2027)年度概算要求」に、民間海上輸送力の活用に向けた調査研究「自動運航技術を搭載した輸送船舶の導入に係る調査研究」を新たに盛り込みました。
この調査研究は、将来的な船員不足などの制約を見据え、民間海上輸送力を安定的に確保することを狙ったものです。計上額は「事項要求」のため明示されておらず、国家安全保障戦略など「安保三文書」の改訂や検討を経て、年末の予算案確定までに固まる見通しです。
事業実施期間は2027年度末までの約1年間。既存の民間船舶に自動運航技術を適用する際、船側にどのような改修が必要になるか、船種に応じて調査研究を進める方針です。
背景には、海上自衛隊や自衛隊海上輸送群の輸送艦艇、そして2027年までに8隻へ拡充されるPFI船舶だけでは、有事の島嶼防衛における部隊展開や物資輸送、住民避難を十分に賄いきれず、民間船舶の補完が不可欠という認識があります。民間船員の危険を最小限に抑えるためにも、将来の無人化を見据えた自動運航技術の研究が必要と判断されたと見られます。
海自で進む さくら型哨戒艦などの省人化
一方で、防衛省の取り組みとは別に、国内では公益財団法人日本財団が中心となり、海運・造船・通信などの企業とともに2020年から無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」を推進しています。
「MEGURI2040」は、少子高齢化に伴う内航海運の船員不足解消や、ヒューマンエラーによる海難事故の低減を目指すプロジェクトです。2019〜2022年度の第1フェーズでは、世界で初めて内航船の実海域における無人運航実証に成功しました。
現在は第2ステージ(2022年10月〜2026年9月)を実施中で、完全自動運航が一部可能なレベル(自動車の自動運転「レベル4」相当)を目指しています。既存の離島航路船、コンテナ船、Ro-Ro船のほか、無人運航機能を備えた新造コンテナ船などで実績を上げており、防衛省もこれらの成果を参考にする可能性があります。
また、人手不足は民間海運だけでなく海上自衛隊にとっても深刻な課題です。そのため海上自衛隊では、もがみ型護衛艦や、さくら型哨戒艦で大幅な省人化を追求してきたのに続き、哨戒艦自体の無人化検討も始まっている模様です。
さくら型哨戒艦は、防衛力整備計画に基づき10隻の整備が明記されており、ジャパン マリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で建造中の1〜4番艦は2026年度末までに就役する予定です。
平時における日本周辺海域の警戒監視を主目的とする同型は、自動航行機能の導入と固有武装の最小化(30mm機関砲1門)により、約30名という少人数での運航を可能にしています。警戒監視にはVTOL-UAV(垂直離着陸型無人航空機)「V-BAT」を運用しますが、将来的には開発中のコンテナ式対艦ミサイル発射装置の搭載や、SHIELD(無人アセットによる多層的沿岸防衛体制)における攻撃用UAVの母艦としての活用構想も浮上しています。
わずか「20時間」で既存船が無人化!? 米最新システムの実用性
個艦防御力が限られる哨戒艦が攻撃の一翼を担う構想に対し、斎藤聡海上幕僚長は2025年11月の記者会見で「(無人化の)技術的な推移を見ながら対応したい」と述べるなど、海上自衛隊は慎重かつ着実に無人化への検討を進めています。
こうした日本の動向を受け、国内での情報発信を強めているのが、船舶用自律航行システムと遠隔操作技術で世界をリードする米シー・マシーンズ・ロボティクス(Sea Machines Robotics)社です。同社は2026年4月に開催された国際海事展「Sea Japan 2026」にも出展しました。
同社のプロダクトは、米軍をはじめNATO諸国、中東、東南アジアなどで採用実績があります。なかでも船舶用自律航行システム「SM300」は、レーダーやカメラなどの各種センサーデータとAI画像解析を組み合わせることで、10フィート(約3m)から300フィート(約91m)までの既存船舶・艦艇の遠隔操縦や無人化を実現します。
さらに、紛争下でのGPS・通信妨害環境(デニード環境)下での動作性能も実証済みです。また、既存船を短時間で無人化・遠隔操作化できるよう、制御装置・通信機器・センサー・インターフェースを一体化したパッケージも用意されており、同社によれば「20時間以内」での改修作業が可能とされています。
自衛隊の海上展開を支える民間補給船から、哨戒艦をはじめ輸送艦艇に至るまで、既存アセットの「無人化・自動化」という要請は高まる一方です。防衛省・自衛隊がこの課題をどのように実現していくのか、今後の取り組みが注目されます。