台風25号による土砂流入で運休中のJR内房線。姉ケ崎~長浦間で代行バスの運行が始まりましたが、列車の暫定復旧もかなり工夫が凝らされていました。
姉ケ崎駅西口から発着する代行バス
台風25号の影響により、2026年9月21日以降、JR内房線では一部の区間で運転の見合わせが続いています。特に姉ケ崎~長浦間では線路内への土砂流入があり、復旧まで少なくとも3か月程度かかる見込みとアナウンスされています。
こうしたなか、10月5日から長浦~木更津間で運転が再開され、同時に姉ケ崎~長浦間でバス代行も始まりました。これにより千葉方面から木更津方面に移動できるようになりました。今回、姉ケ崎~長浦間の代行バスに乗車し、現地の様子を確かめてみることにしました。
代行バスは姉ケ崎駅(市原市)では西口ロータリーに、長浦駅(袖ケ浦市)では北口から発着しています。いずれも駅構内に代行バスの案内が示され、係員が積極的に声掛けして案内をしていました。内房線だと1駅間5.4kmの距離で、普段であれば普通列車が5分ほどかけて走っています。
姉ケ崎~長浦間では内房線の海側に国道16号線が並行しています。姉ケ崎を出発した代行バスは潮見通りと久留里街道を経て、大半の区間で国道16号を走ります。進行方向左側の車窓で、内房線の土砂流入があった場所も見ることができます。そこでは復旧作業が進められ、作業用の軌陸車の姿も見えました。
姉ケ崎~長浦間で何分かかる?
乗車した代行バスの所要時間は実測で25分でした。途中、国道16号で片側2車線のうち1車線が作業のため規制されていたため、渋滞が発生していました。渋滞がなければ、所要時間は短くなりそうです。
といっても、鉄道と比べて所要時間は約5倍、実際にはバスと電車の乗り継ぎがあるため、さらに時間がかかります。代行バスと列車の連携はなく、先の渋滞のため、長浦で乗り継ぐ列車が発車してしまい、次の列車を待つことになりました。10月8日現在、長浦~木更津間は1時間あたり2本の運行となっています。
普段であれば、千葉と木更津の間は内房線を使って40分程度で移動できます。しかし、代行バスでは乗り継ぎが上手く行っても1時間10分程度、今回のように乗り継ぎが上手く行かない場合は1時間40分程度と、普段より1時間増しとなるようです。
ラッシュ時間帯には行列が見られる代行バスですが、日中は混雑している様子がありませんでした。バスが続いて発車していることもあり、乗車したバスでは乗客は2人だけでした。
列車の本数が少ない理由
列車が動いている区間でも、本数が少ないのにはワケがあります。運転を見合わせている姉ケ崎~長浦間にはJRの変電所があり、普段電気を供給している区間に土砂流入があるため、電気を送ることができません。
この変電所では電車が走行するための電気を供給していますが、土砂流入のために姉ケ崎方への送電ができていません。変電所の設備は、故障に備えて隣接した変電所どうしで電気の融通ができる構造になっており、今回も姉ケ崎方は隣の変電所から電気を融通することで運転が行われています。
しかし、変電所の容量の都合で融通できる電力には限りがあります。このため、内房線の千葉方でも列車の本数を減らして運行されています。さらに、八幡宿~姉ケ崎間では列車の速度も落として運行され、電気を使い過ぎないようにしているのです。
急ごしらえの折り返し設備
また、今回、土砂流入の被害が甚大だったのは姉ケ崎~長浦間ですが、長浦~木更津間(16.2km)での運転見合わせが長く続きました。長浦~木更津間で折り返しができる駅は木更津しかないため、長浦~木更津間で運転を再開するにあたり、新たに長浦駅へ折り返し設備を仮設しています。
上り線と下り線を結ぶ渡り線と、ポイント(分岐器)が2つ設置されましたが、ポイントの切換は手動で行われ、現地に係員を配置しています。さらに列車の折り返し作業を行うべく、専任の係員を乗車させ、地上の係員と無線を使って連絡しながら折り返しています。
木更津から上り線を走行した列車は、長浦駅で渡り線を使って下り線に移って折り返します。上り線に設けられたポイントは向きが固定され、犬釘を使って動かないようにしています。手動で動かしているのは下り線のポイントですが、切り換えたあとは金具で固定し、列車の重みや振動などで不用意にポイントが動かないようにしていました。
長浦~木更津間は209系電車による8両編成を使用しています。この209系は4両編成2本を連結して使用していますが、先頭車どうしを連結している部分は通り抜けができません。このため、現地には連結部を渡るための昇降台も仮設されています。
こうやって「非常時輸送」が成り立っている!
今回、渡り線が設置されたのは長浦駅の千葉方です。長浦駅では木更津方に踏切があるため、渡り線は踏切がない方に設けられました。
長浦駅で折り返し作業を終えた列車は、長浦駅でしばらく停車をしています。長浦駅の近くにある踏切は、列車が長浦駅に停車している間は動作せず、長浦駅の信号機も停止現示の赤信号として列車を発車させないようにしています。発車時間が近づくと踏切が閉まり、次いで信号機が進行現示の青信号とすることで、列車が発車できるようになっています。
なお今回、代行輸送による運転再開に時間がかかった理由として、バスの乗務員不足などを背景に手配が困難だったことが報じられています。乗車したバスは関東自動車(栃木県)のバスでしたが、JRバス関東や宮浦観光バスも見かけました。このほかにも複数のバス会社が内房線の代行輸送を担当しています。