【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザからのイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃を許した2023年10月以降、イスラエルは中東で戦線を拡大させてきたものの、国民の多くは将来の安全保障に対して不安を抱いている。ネタニヤフ政権はガザ、レバノン、イランでの一連の軍事作戦の戦果を強調するが、国民の安心には必ずしも結び付いていないようだ。
◇3分の2が「悲観」
イスラエルはこの3年間で、ハマスの最高指導者に加え、対イスラエルでハマスと共闘関係にあるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの最高指導者を殺害。今年2月には米軍と協力し、宿敵イランの最高指導者アリ・ハメネイ師の命も奪い、ネタニヤフ首相は「(イスラエル)せん滅の脅威を排除した」と豪語している。
しかし、シンクタンク「イスラエル民主主義研究所」が毎月実施する安全保障について「楽観」か「悲観」かを問う世論調査では、イスラエルがガザでハマスとの停戦に至った昨年10月以降も一貫して悲観が楽観を上回り、最新の8月の結果では楽観が33.6%に対し悲観は64.5%に達している。
◇対話への環境整わず
紛争心理学を専門とするヘブライ大のエラン・ハルペリン教授は、国民の悲観が強まる現状について、ハマスやヒズボラ、イランが弱体化してもなお存続している現実を前に、人々が「軍事力だけでは脅威を排除できなかった」と認識しているためだと分析する。
ハルペリン氏は、23年のハマスによる奇襲で「紛争を管理し、いざとなれば脅威を完全排除できる」と見なしてきたイスラエル社会の「信仰」が崩れたと説明。国家や、個人の生命の危機と感じたことに伴う「集団的なトラウマ」が形成され、ハマスやヒズボラなどへの苛烈な攻撃を支持したと解説する。
ただ、軍事衝突では目標達成に行き詰まると、外交による解決も模索する第2段階に入るのが常だと指摘。イスラエル社会も第2段階に移行しつつあるが、「まだ不安が根強く、対話による解決策について社会で広く議論する環境は整っていない」と述べた。
〔写真説明〕5日、エルサレムで行われた戦死者追悼式典に参列するイスラエルのネタニヤフ首相(右から2人目)(AFP時事)
〔写真説明〕故郷を追われたパレスチナ人の帰還を求めるプラカードを掲げる人=5月13日、イスラエル・テルアビブ(AFP時事)