中央線の「複々線延伸」は本当に実現するのか? 計画から半世紀以上 “多摩都民の悲願”を阻む壁

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東京駅を起点とするJRの5方面路線で複々線区間が短い中央線。利用者の多い三鷹~立川間は半世紀以上前から複々線を延伸する計画がありますが、いまだ実現していません。何が計画を阻んでいるのでしょうか。

昭和記念公園を活用する案も

 東京駅を起点とする5方面路線、東海道・中央・東北・常磐・総武線のうち、複々線(三複線)区間が最も短いのが中央線です。その他の路線は東京駅起点で概ね30~40km圏まで複々線化されているのに対し、中央線は24.1kmの三鷹駅で止まっています。

 2024年度のJR東日本乗車人員ランキングから三鷹~立川間を見ると、武蔵境が約6.3万人で65位、武蔵小金井が約5.6万人で71位、国分寺が約10.1万人で31位、国立が約4.8万人で94位、そして立川は約15.4万人で14位と上位の駅ばかりです。

 立川が東京駅から37.5kmですから、せめて立川まで複々線化していてもおかしくありません。実際、三鷹~立川間の複々線化計画は存在し、今も消えてはいません。では何が障害になっていたのでしょうか。

 中央線東京~中野間は戦前から複々線化・立体交差化されていましたが、中野~三鷹間は地平複線でした。1961(昭和36)年に中野~三鷹間の高架複々線化が決定し、1969(昭和44)年5月までに順次、完成しました。

 すると立川市は早速翌月、「三鷹・立川間立体化複々線促進協議会」を設立し、複々線区間延長の陳情を開始します。三鷹以西は特急、特別快速、快速、貨物列車が複線を共用するため増発が困難であり、さらに線路が街を南北に分断していました。

 しかし同区間の複々線化は簡単にはいきません。方向別にするか、路線別にするか、青梅線との接続はどうするか、三鷹電車区、小金井電車区との取り付け方、さらには御茶ノ水~三鷹間の運転方式を変更するかなど、解決すべき問題が多々ありました。

 国鉄は1980(昭和55)年4月、国庫補助事業として「中央線三鷹・立川間連続立体交差化事業調査」が採択されると2年にわたり調査を実施し、複々線化計画とあわせて1982(昭和57)年7月に東京都へ報告しました。

 調査結果は、1982年に開かれた国鉄の第33回「停車場技術講演会」で報告されています。これによると、連続立体交差化は「高架案」と「地下案」を検討しましたが、地下化は既設立体道路・埋設物、河川の付け替えや電車基地との取り付けが困難であり、総事業費が高架化の数倍になるとして除外しました。

 高架化は既設線を仮線に移設して跡地に高架線を建設。仮線を高架に切り替えた後、仮線の位置に高架を建設して複々線化する想定でした。武蔵小金井は3面5線化、国分寺は2面4線化し、立川駅から近い昭和記念公園に車両基地を新設する構想もありました。

後回しにされた複々線化、結局どうなった?

 東京都は1984(昭和59)年に都市計画の叩き台を用意して協議を重ねてきましたが、国鉄の財政悪化もあり具体化しないまま民営化を迎えます。計画を引き継いだJR東日本は高架化、複々線化の一体的な検討を再開し、既設線を高架化、複々線化部分は地下に建設する「3重構造」の立体交差化を決定。1994(平成6)年に都市計画決定しました。

 1980年の調査では並列4線の高架橋を想定しており、そのための空間も一部に用意されていましたが、この間に日照に関する環境基準が改正されます。高架横に追加で空間を確保する必要が生じ、用地買収が必要になることから、実現は困難でした。

 そこで確保済みの土地で急を要する連続立体交差事業(高架化)を先行し、複々線化は後回しにすることで、ようやく事業が動き出したのです。促進協議会の設立からちょうど30年目の1999(平成11)年、三鷹~立川間13.1kmの高架化工事がついに着工。2013(平成25)年に完成したのはまだ記憶に新しいところでしょう。

 では、後回しになった複々線化はどうなったのか。前述の通り、計画は中止されていません。「東日本旅客鉄道中央本線(三鷹~立川間)連続立体交差化及び複々線化事業」は、1期工事を高架化、2期工事を複々線化としていますが、2024年3月、2期工事の工事期間を「2022~2028年度」から「2027~2033年度」に変更申請しています。

 申請書は延期の理由を「現時点で今後の利用者の需要動向・財源確保方策等が確定していない」としており、これが今も解決していない以上、来年度の着工は現実的ではありません。快速電車12両化の効果もまだ評価が終わっていないでしょう。

 三鷹~立川間地下複々線化の事業費は2022年度時点で3600億円の見込みで、現在はさらに増えていると思われます。複々線化工事は原則、事業者が費用を負担します。将来的な人口減少を踏まえれば、あまりに過大な投資と言わざるを得ません。

 一方、国土交通省は「今後の都市鉄道整備の促進策のあり方」について検討会を設置し、新たな利用者負担制度の創設を提言しています。新たな仕組みは計画を再始動させるでしょうか。