バンコク・スワンナプーム国際空港に新サテライトが開業。しかし利用者からは移動時間の長さなど課題も。一体どうなっているのでしょうか。
ピカピカの新ターミナル その名は「サテライト」
タイの首都バンコクの玄関口であるスワンナプーム国際空港。コロナ禍を経て再び多くの旅行者で賑わうこの空港で、2023年9月に新たなサテライト(別棟)ターミナルの運用が開始されました。しかし、このピカピカの新施設、利用者からは「遠い」「不便」といった声も聞かれます。一体どういうことなのでしょうか。
バンコクには2つの空港がありますが、そのうち主要なハブ機能を担うのがスワンナプーム国際空港です。2006年9月の開港以来、東南アジアの拠点として多くの便が発着しています。増え続ける航空需要に対応するため、既存ターミナルの南側に建設されたのが、「サテライト」です。
このサテライトにはS101からS128までの計28の搭乗ゲートが配置されています。コンコースの全長は約1kmにも及び、幅や吹き抜けの天井高も圧倒的なスケール感を誇ります。例えるなら、香港国際空港第1ターミナルの長大なコンコースと、上海浦東空港の広く天井が高いコンコースを合わせたような印象です。
サテライトへは、既存のターミナルビルでチェックインや保安検査、出国審査を済ませたあとに移動します。これまでのターミナルよりも搭乗ゲート前のスペースはゆったりとしており、フリーの休憩スペースも快適になっているなど、新しい施設ならではのメリットも感じられます。
サテライトへの移動は、既存ターミナルから少し特殊なルートをたどります。まず、国際線の出国審査を終えて出発ロビーに出ると、正面にヒンドゥー教の神話「乳海攪拌」をモチーフにした巨大なオブジェが目に飛び込んできます。サテライトへ向かうには、このオブジェの裏手にあるエスカレーターで地下まで降ります。
地下に設けられた駅から「シャトルトレイン(APM/自動新交通システム)」に乗ってサテライトへアクセスします。プラットホームに降りる手前にはゲートがあり、サテライトから出発する便の搭乗券をスキャンしないと入れません。
シャトルトレインはおおむね3分間隔で発車し、サテライトまでの所要時間は3分ほどです。サテライトに到着後、エスカレーターで3階に上がると、そこには巨大なコンコースと、きらびやかな金属製の象のオブジェが出迎えてくれます。
広大すぎるがゆえの「課題」
新しく快適なサテライトですが、現段階ではいくつかの課題も見られます。最大の課題は、やはりターミナルビルからの移動時間でしょう。
出国審査を終えてまっすぐサテライトに向かった場合、サテライトの3階コンコースまでは10分から15分ほどです。しかし、問題はここからです。全長約1kmもある長いコンコースのため、もし搭乗ゲートが両端付近だった場合、さらに10分近く歩くことになります。
また、現状ではサテライト内の免税店や飲食店の選択肢はターミナルビルに比べて限られています。そのため、買い物を楽しみたい人はターミナルビルで済ませてから移動する必要がありますが、そうなるとさらに移動時間がかかってしまいます。
加えて、「VAT(付加価値税)払い戻し」を受ける旅行者にとっても不便な点があります。還付手続きを行う「VATリファンドオフィス」はターミナルビルのDコンコースにしか設置されていません。サテライトから出発する場合、手続きのためにDコンコースを往復する必要があり、余計な動線が発生してしまうのです。
ラウンジ利用者は特に注意
特に時間に注意が必要なのは、航空会社のラウンジを利用する人です。タイ航空以外の航空会社ラウンジは、既存ターミナルのDコンコースの両サイドに集中しています。ここからサテライトへ向かうとなると、20分以上かかることも。さらに端のゲートであれば、合計で30分以上の移動時間を見込む必要があります。搭乗開始時刻に間に合うためには、ラウンジをかなり早めに出なければなりません。
サテライトにもラウンジはありますが、4階のラウンジエリアで現在利用できるのは「ミラクル・ファーストクラスラウンジ」のみです。このラウンジは世界各地の空港ラウンジが使える特典「プライオリティ・パス」で入場可能ですが、行ってみるまで混雑状況はわかりません。一度サテライトに移動するとターミナルビルには戻れないため、もし混雑していた場合は、落ち着かないまま搭乗を待つことになります。
将来的にサテライトにも店舗が増え、VATリファンドオフィスが設置されれば、利便性は向上するでしょう。しかし、航空会社がサテライトにラウンジを新設する可能性は低いと考えられます。ラウンジ利用者にとっては、自分の乗る便がサテライト発だと“外れ”と感じる状況が、しばらく続くことになりそうです。