戦車の乗員「少ない方がいい」は嘘だった? “謎の4人目席”が最新型に出現 元将校が明かす省人化の罠

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戦車の乗員は何人がベストでしょうか。機甲科と普通科の視点の違いから、省人化の歴史、将来の戦車に求められる役割の変化までを探ります。

「隣の芝生は青い」

「あいつらエンジン付きの車で動けて楽でいいよな」

 東富士演習場は富士山の裾野にあり、なだらかな傾斜が広がっています。演習では、攻撃前進の経路が富士山に向かって緩やかな斜面を登り続ける場面が多いようです。

 装備を抱え、2本の脚で前進する普通科隊員の脇を、戦車はエンジンをうならせ、履帯をきしませながら進んでいきます。状況によっては普通科隊員が戦車より先に出なければならない場面もあります。

 筆者(月刊PANZER編集部)も演習取材で普通科と同行したことがありますが、延々と続く緩斜面は思いのほかきついものでした。正直なところ、エンジンの力で進んでいく戦車が楽そうで、うらやましく見えました。

「あいつら、帰ったら身の回りの整備だけだから楽でいいよな」

 演習終了後、駐屯地に戻った機甲科隊員には戦車の掃除、点検、整備、そして翌日に備えた補給や給油などたくさんの仕事が待っています。戦車は大きくて重く、過酷な環境で使われる複雑な乗りものです。動ける状態を維持するには相当の手間が掛かります。機甲科隊員はこの乗りものの世話が終わってようやく、自分の面倒を見ることができます。

 普通科隊員はこの厄介な乗りものの面倒を見る必要はありません。その分休息にも早くありつけてうらやましく見えるというわけです。お互い、隣の芝生は青く見えるものです。

「3人で動かせる」と「3人で戦い続けられる」は違う

 1967年に配備されたスウェーデン陸軍のStrv.103(Sタンク)は異彩を放ちました。砲塔のない尖った車体に主砲を固定するという独特の形状もさることながら、当時としては珍しい3名乗員だったのです。第二次世界大戦後の戦車では4名乗員が一般的でした。車長、砲手、装填手、操縦手という構成です。Sタンクは自動装填装置を採用して装填手を省いたのです。

 画期的な乗員配置に見えましたが、Sタンクを実際に運用した元スウェーデン軍将校ミカエル・オルソン氏が興味深い指摘をしています。

「3名で戦車を操作するには十分だった。しかし部隊として持久力を確保するには不十分だった」と言うのです。

 戦車は走って撃つだけではありません。前述の機甲科隊員の愚痴のように、部隊として警戒、監視、当直、整備、休養などを交代でこなさなければなりません。3両の戦車で編成される1個小隊なら3名乗員では9人、4名乗員なら12人です。3名分の労力ですが小隊にとって大変な差分です。

「戦車を動かすために必要な人数」と「戦車部隊を維持するために必要な人数」は違うのです。Sタンクは1960年代の時点で、この問題をかなり明確に示していました。

 戦車の歴史を振り返ると、乗員は省人化方向でした。第二次世界大戦期には5名乗員が珍しくありませんでした。車長、砲手、装填手、操縦手に加えて、無線手などが乗る構成です。戦後になると無線機の性能向上などで無線手が廃され、4名乗員が主流となります。

省人化の流れに異変

 自動装填装置が採用され、装填手を省いた3名乗員も増えています。さらに2名も研究されたのですが、先に紹介したように現場では不評です。日本の90式や10式も3名乗員ですが、似たような話を仄聞(そくぶん)します。

 しかし、ここへ来て少し風向きが変わってきました。例えばラインメタルの将来戦車のコンセプトモデルKF51パンターは基本的に3名乗員ですが、車体前部には4人目のオペレーター用スペースを設けています。ここは予備席ではありません。兵器・サブシステムの専門員、指揮官、さらにはドローンのオペレーターなどを想定したものです。

 一見省人化の流れに逆らうような動きですが、背景には戦車に求められる役割の変化があります。ドローンで周囲を偵察し、別の無人車両を前進させ、各種センサーから得られた情報を処理し、ネットワークを通じて他の部隊と共有する。無人アセットと有人プラットフォームとの連携(Man-Unmanned Teaming:MUM-T)という運用法の開発です。つまり戦車の任務は敵と直接撃ち合うよりも、様々な有人・無人システムを束ねるプラットフォームへ変わるかもしれないということです。

 しかし実際の現場部隊にしてみれば、戦車の役割が変わろうと手間の掛かる乗りものであることは変わりません。そこにドローンや無人車の世話まで加わります。4人目の乗員は重い砲弾を扱うムキムキの装填手であろうと、ディスプレイやタブレット端末を操作する、か細い(?)システムオペレーターであろうと、人手は増えるのは歓迎されます。

 ちなみに陸上自衛隊の16式機動戦闘車は4名乗員です。90式や10式のような装軌式(いわゆるキャタピラ)車両よりも16式のような装輪式(タイヤ)車両は走行装置の構造などが異なるため負担にも違いがあります。

「あいつら手間の掛からないタイヤ付きで、人も多くて楽でいいよな」と、同じ機甲科隊員の中でも隣の芝生は青く見える、といったことが言われているのかは分かりません。