幅わずか1.4km! 「首都圏の生命線」を24時間さばく海の交通整理 巨大船から漁船まで全部見る!

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東京湾の入口・浦賀水道は、一日に数百隻もの船が行き交う海の大動脈です。しかも狭くて潮が速い“難所”。この重要ポイントを誰がどのようにさばいているのでしょうか。

通れる幅は1.4km

 神奈川県の三浦半島と千葉県の房総半島に挟まれた「浦賀水道」。東京湾と太平洋をつなぐ、いわば海の玄関口です。神奈川側の観音崎に立つと、対岸の房総半島が思いのほか近くに見えます。

 ここはとにかく船が多い場所です。海上保安協会の調査報告書では、浦賀水道では一日平均500隻以上が行き交うとされています。

 その積み荷も、鉄鉱石や原油、石炭、LNG、さらには私たちの食卓にのぼる食料品まで、暮らしを支える様々な物資です。まさに首都圏の生命線といえる海の道なのです。

 ところが、この浦賀水道は“通りやすい海”ではありません。海の幅は約6.5kmあるものの、危険な浅瀬などがあるため、大型船が安全に通れる航路の幅はわずか1.4kmほどしかありません。

 しかも潮の流れが速く、決められた航路から少し外れれば座礁の危険もあります。狭いうえに船は多く、潮も速い。こうしたことから、日本でも有数の“航海の難所”として知られているのです。

 では、この大渋滞しそうな海を、誰がどのように整理しているのでしょうか。

海の交通整理はこんなに大変

 その交通整理を担っているのが、海上保安庁の「東京湾海上交通センター」、通称「東京マーチス」です。マーチス(MARTIS)の名前は、船舶交通の情報サービスを意味する英語(Marine Traffic Information Service)の頭文字をとった無線でのコールサインに由来します。

 東京マーチスは、元は横須賀市の観音崎にありましたが、現在は横浜市の第三管区海上保安本部と同じ庁舎に集約されています。ここでは、高性能レーダーやカメラ、船が自分の位置や行き先などを自動で送信する「AIS(船舶自動識別装置)」からの情報を組み合わせ、湾内を行き交う船の動きを24時間体制で監視しています。

 長さ200m以上の「巨大船」は、事前に航路の通過予定時刻などをセンターに通報するルールがあり、一定の危険物を積んだ船などにも同じように通報が求められます。

 とはいえ、海の上は道路のように整然とはいきません。航路には大型タンカーや小型漁船、プレジャーボートやヨットなどが混在しており、大きさも速さも大きく異なる船が同じ海域を行き交っています。そのため、陸上の交通とは違った難しさがあるのです。

 さらに船には“ラッシュアワー”もあります。時事通信が2016年に報じたところによると、東京湾では入港が朝4~8時頃、出港が16~20時頃に集中するといいます。貨物船は日中に港で荷揚げや荷降ろしをすることが多いため、この時間帯に集まるのです。

 そのような混雑のなか、運用管制官は船と無線でやりとりしながら、船同士がぶつからないよう航路に入るタイミングを調整したり、危険が迫れば「安全な間隔を確保してください」と呼びかけたりします。東京計器が発行する技報によると、東京マーチスでは約90人の運用管制官が4班に分かれて勤務しているとされています。

 この体制が整えられた背景には、過去の苦い教訓があります。2011(平成23)年の東日本大震災の直後には、沖へ避難する船と入港できずに停泊する船で東京湾内が一斉に混雑し、海難の危険性が高まったと報じられています。これを教訓に、それまで港ごとに分かれていた管制機能を一つに束ね、東京湾全体を見渡せる一元的な体制が2018年に整備されました。

 普段私たちが意識することの少ない海の上にも、目に見えない“交通整理”があります。狭くて速い難所の安全は、24時間体制で海上交通を見守る人たちによって、今日も支えられています。