真下まで丸見え! 対潜哨戒機の機首に設けられた総ガラス張りの“特等席”とは

タクシー市場拡大の”鍵”とは?

まるで飛んでいるみたい!? 機首に飛び出した見張員席は全面ガラス張り。搭乗員もビビる特等席が用意された理由とは?

海上自衛隊の初代対潜哨戒機P2Vと国産改良型P-2J

 現在、海上自衛隊は哨戒機としてP-3C「オライオン」やP-1を使用しています。これらは水上監視用として機首や機体側面に大きなレーダーを搭載し、潜望鏡やシュノーケルなど水面上に露出した敵潜水艦の構造物を捉えることができます。しかし、P-3CやP-1以前に活躍した哨戒機(対潜哨戒機)であるP2V/P-2J「ネプチューン」には、レーダーに加えて機首に“乗員が目視で哨戒する座席”が設けられていたのです。

 P-2Jの前身、P2V-7が海上自衛隊に導入されたのは今からちょうど70年前の1956年、アメリカ海軍からの供与機としてでした。その後48機が川崎重工業によってライセンス生産され、海上自衛隊の主力対潜哨戒機として活躍します。

 しかし、当時は潜水艦の高速化や原子力潜水艦の登場など、高性能化が進んだ時代でした。導入して間もないP2V-7の哨戒能力も追いつかなくなってしまいました。1960年には新型の固定翼哨戒機を検討し始めますが、アメリカでP-3の開発が始まったばかりで、まだ日本に導入できるものでもありません。「それならば日本製の新型哨戒機をつくればいいじゃないか」となりましたが、そう簡単なことではありません。そこで川崎重工業より提案されたのが、既存のP2V-7を改良して新型対潜哨戒機をつくる案でした。

タバコも吸える!? 昭和を感じる見張員席

 P2V-7の国産改良型として誕生したのがP-2Jです。P-2Jは基本的にP2V-7の機体構造を踏襲していましたが、全長は1m以上長くなりました。操縦や動力、哨戒装備は一新され、哨戒能力が強化されています。それ以上に改善されたのが居住性です。長時間の哨戒任務が多いなかで活動の助けとなるよう、通路天井は高くなり、空調機器や冷蔵庫が設置されました。

 P2V-7、P-2Jどちらにもある特徴的な構造が「機首見張員席」です。現代のP-3CやP-1であれば、大型のレーダーが搭載されている機首の先端部に見張員用の座席が設けられているのです。

 見張員席ですから、そこに座った隊員の主な役割はもちろん見張りです。おもに対潜哨戒において、潜水艦の存在や目標物を肉眼で確認、追尾する役割を担いました。また座席の左手側にはサーチライトの操作スティックが配置されており、夜間や低空飛行時には目標を照らす役割がありました。

 座席横に蓋付きの灰皿が取り付けられている点は時代を感じます。現在では任務中、ましてや航空機の機内でタバコを吸うことなど、ありえないという風潮ですが、喫煙者も多く、どこでもタバコが吸えた昭和の時代、それは必需品だったのです。

無事故記録を打ち立てた「栄光の対潜哨戒機」

 機首見張員席は、座席前方はもちろんのこと、足元まですべてガラスで覆われており、見晴らしは非常に良さそうです。実際に飛行中に座ったことのある方から聞いた話では、かなりの開放感とスピードを感じることができるとのこと。

 ただし、海面近くの低空を飛行するときは、恐怖を感じることもあるそうで、実際に危険が伴うため、離着陸時には機首見張員席に座ることは禁止されていたといいます。

 さてP2V-7の後継として1971年から運用が開始されたP-2Jですが、ひとつ大きな記録を持っています。それは、すべての機体が無事故で引退を迎えたことです。配備された83機の機体の総飛行時間は61万7861時間。1994年5月に全機が一度も事故などを起こすことなく引退しました。

 P-2Jは、アメリカ生まれのP2V-7の改良ということで、完全なる純国産とはいい難い面もありましたが、川崎重工業と海上自衛隊の搭乗員たちのていねいな仕事のたまものということができるでしょう。この驚異的な無事故記録は、現在でも破られておらず、川崎重工業の技術力と海上自衛隊の整備・運用能力の高さを示すものとしてP-2Jは、「栄光の対潜哨戒機」として、語り継がれています。