「おお、すごい絶景! でも高速が開通したら見なくなるかな…?」熊本-鹿児島「142kmの海沿い無料道」建設いよいよ佳境

雨で需要が増える業界と言えば?

熊本と鹿児島の海沿いを結ぶ「南九州道」142kmの建設が佳境に入りつつあります。ただ、既存の国道で結んでいる未開通部が開通すると、味わえなくなるかもしれない「絶景」が。現地はどうなっているのでしょうか。

抜群に美しい夕陽が「素通り」の懸念

 熊本地震で被災した高速道路のうち、「南九州道」(南九州西回り自動車道)は、いまも完全復旧には至っていません。起点側の八代JCT~八代南IC間は、復旧まで少なくとも2年を要するとされていますが、それでも九州道が不通の間には熊本~鹿児島の行き来で大きな役割を果たしました。その南九州道では未開通区間の建設も佳境を迎えつつあります。

 南九州道は八代から東シナ海沿いに鹿児島を目指す全長約142kmの高規格道路で、国道3号や肥薩おれんじ鉄道、JR鹿児島本線と並行します。全体の約73%にあたる約103kmが供用済みで、残る区間の建設も着々と進んでいます。なお、暫定2車線で全線が無料です。

 2028年度には芦北出水道路(29.6km)のうち水俣IC~出水IC間が開通する見通しで、そうなると未開通区間は鹿児島県の阿久根市と薩摩川内市を結ぶ阿久根川内道路(22.4km)だけになります。これが完成すれば、内陸経由の九州道とともに熊本~鹿児島間の高規格ルートが二重化されます。熊本地震を経験した地域にとって、その意味は小さくありません。

 現在、阿久根川内道路の区間は国道3号で連絡しています。高速が通れば多くのクルマはそちらへ転移しますが、だからこそ、今のうちに走っておきたい理由もあります。

 鹿児島側の現在の終点である薩摩川内水引IC(川内市)から北上する国道3号は、東シナ海沿いを走る国道3号のなかでも特に「絶景」の区間です。海が“近い”というより、高い崖の上から海と海岸線のパノラマが広がる区間が長く続きます。

 特に、国道に隣接する肥薩おれんじ鉄道の牛ノ浜駅(阿久根市)からは、大小の岩礁とその上に建てられた鳥居、さらに遠く甑島を望む海へ夕陽が沈んでいく景勝地です。このため小さな無人駅ながらクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」が停車することもあるほど。そこから数キロ走ると、ようやく阿久根の市街地が現れます。

 これに対し、建設中の阿久根川内道路は内陸を通るルートです。阿久根ICも市街地から離れた位置にあり、高速開通後は、夕陽の絶景も阿久根市街も素通りするクルマが増えることが予想されます。

 ただ、その懸念を跳ね飛ばすような動きもあります。

 阿久根市は、全線開通後に市内の交通量が2倍以上になると見込んでいます。さらに、牛之浜海岸が新設の大川IC(仮称)付近に近く、八代~鹿児島間のほぼ中間点に位置することに着目し、そこに新たな道の駅を設けることを計画しています。夕陽の絶景を、立ち寄り拠点として整備しようというわけです。

 現に隣の出水市では、2017年に「出水阿久根道路」が開通して以降、企業立地件数が約19倍、設備投資額が約25倍に伸びたというデータを発表しています。前後の区間がまだ国道3号でつないでいる状態でも、宿泊客は急速に増えているそうです。

 南九州道の全線開通後、道の駅ができれば夕陽を味わう拠点は生まれるかもしれませんが、国道3号の崖上を走りながら海を見渡すあの感覚は、クルマを走らせた人間にしかわからないでしょう。それを全線開通前に味わっておくのもよいかもしれません。