被ってくれないヘルメット、被らせるには「これだ!!」 警視庁も太鼓判の学生アイデア 長期プロジェクトの“答え”

雨で需要が増える業界と言えば?

自転車のヘルメット着用率向上を目指す警視庁のプロジェクト。その2年にわたる活動の結論が出ました。被りたくなるヘルメットを作るだけでは、課題が残りました。

「被らない理由がないほど完璧なヘルメット」を作っても

 みんなにヘルメットを被ってもらうには、どんなことをすればいいのか――。この課題に、警視庁が官民連携で取り組んだ「みんなのヘルメットプロジェクト」(みんプロ)が答えを出しました。それを公開する最後のイベントが「ららぽーと豊洲」(東京・江東区)のイベントスペースで開催されました。

 警視庁主催の「みんプロ」は、交通安全啓発としては、異例の利用者目線でスタートしました。法律を理由にヘルメット着用を迫るのではなく、学生のアイデアや商品開発を通じて、着用率アップのために何ができるかを問い続けた2年に及ぶ長期プロジェクトでした。

 当初は、青山学院大学と山野美容専門学校の学生のアイデアを借りて「被りたくなるヘルメット」を企画。ヘルメットを被らない理由に対する回答を学生視点で洗い出し、その解決策を新しいヘルメット開発に活かす。無印良品のノウハウで商品化することで、ヘルメット着用率を上げるアプローチのように見えました。

 例えば、ヘルメットを被ると髪型が崩れるという問題には、衝撃を和らげるインナーの前部にスペースを作り、前髪のセットが崩れないようにする内装デザインに。ポニーテールやお団子を作っても、布製キャップのように髪を逃がすことのできる構造に、ヘルメット後部も工夫しました。

 男性目線でヘルメット髪型問題を取り上げたのは、山野美容専門学校の学生でした。どんなに形状を工夫しても、髪型が乱れることは否めません。ドライシャンプーを携行すれば、ペチャンコになった髪も、瞬時にさらさらにできることを実演しました。

 ほとんどが曲面形状のヘルメットの外装にも、あえて平面を作る。そこに“推し”のステッカーなどを貼れるようにして愛着が持てるヘルメットにしよう、という試みも学生目線で生まれました。学生たちからは着用率を「50、60%まで引き上げたい」との思いが語られました。

 また、事故を検証する中でわかった、あごひもが適切でないために事故で役に立たない、という悩みも、片手で装着できるシステムを「良品計画」が開発。風が抜けるなどの快適性も考慮し、“被らない理由がない”というほど完璧なヘルメットを世に送り出したのです。

大学生考案の“秘策”を小学生が実行!

 しかし、そこまで完璧なヘルメットを作っても、なお課題が残りました。

 2026年9月6日、「ららぽーと豊洲」で、その結論となる最後のイベントで、交通総務課の2人の警察官が、コント形式で悩みをぶちまけています。

「お子さんには被せていただいてるけども、お父さんお母さん自身がなかなか被ってくれない」
「自分よりもお子さんが大事だっていうことなんですけど。でもさ、ヘルメット被せてるだけいいんですけど、万が一、事故になってしまったら……」
「事故が起きちゃって、この子だけ助かりました。親御さん大怪我しちゃいました。で、お子さんは安心ですか、って話なんです」

 その“答え”が、誰かにヘルメットを贈ろう、という呼びかけでした。

 贈呈式に参加した1人は、深川交通少年団の小学生でした。さらに、もう1組は青山学院大学の男子学生です。その彼が「大切な人にプレゼントされたら、贈るほうも意識づけになるし、贈られたほうも愛着がわいて、実際に被ってくれるのではないか」と、みんプロの中で提案したことが、着用率アップの切り札とされたのです。

 交通少年団の男の子にヘルメットをプレゼントされた祖母は、戸惑いながら感想を答えました。

「ヘルメットありがとうございます。実は普段あんまりヘルメットを被ってないので、今日はとっても勉強になりました。すいません、こんなことを言って。なので、明日から必ず被らさせてもらいます(笑)」

 警視庁によると、東京都内の2025年のヘルメット着用率は15.0%。全国平均の同年21.2%を大きく下回ります。2025年中の都内、自転車関連の人身事故は1万5109件。2026年1月~7月中の事故も8189件に達しています。さらに、2025年中の自転車乗車中の死者数は21人。その死因の約67%、14人が頭部損傷でした。

 地方自治体は、購入補助などさまざまな施策で着用率アップを目指しました。ただ、この施策で意識の高い利用者の着用は一巡した感がありました。みんプロで見出された「大切な人にヘルメットを贈る」、という新しい方法が、伸び悩む着用率に変化をもたらすきっかけとして期待されています。