約16年ぶりに全面刷新された日産「エルグランド」を公道で試乗。見た目や快適装備だけの単なる豪華さだけでなく、新時代に求められる「ラグジュアリーさ」を考えた新型の実力を検証しました。
新時代の「ラグジュアリー」とは何か?
2026年7月、“ラグジュアリーミニバン”の元祖といわれる日産「エルグランド」が、約16年ぶりに新型へと刷新されました。その新型エルグランドを、今回ようやく公道で試乗する機会を得ました。
筆者(まるも亜希子:カーライフ・ジャーナリスト)が試乗を通じて実感したのは、本モデルが単に見た目や装備によって定義される豪華さではなく、時代とともに劇的に変わった、さまざまな「ラグジュアリー」の概念を組み合わせて構成されたクルマだということです。
まず一番強く印象に残ったのは、驚異的な静かさ。新型エルグランドには第3世代へと進化したe-POWERが搭載されていますが、その大きな特徴は、エンジンが発電用に特化した1.5Lターボの「ZR15DDTe」型になったことです。
第2世代までのガソリン車と共用だったエンジンと比べて、発電時に最も頻繁に使うトルク域、回転数に最適な設計となったことで、振動は40%も減ったといいます。さらにターボも可変機構が不要となり、専用の大型ターボとなって吸気・排気効率が改善。これにより、信号待ちからの発進でも室内は競合モデルより騒音が10dBほど、100km/h巡航時でも5dBほど小さくなったそうです。
さらに、日本向けモデルでは初となる「高機能遮音膜」を持つ超高遮音ガラスを、フロントから後席ドアガラスまでの広範囲に採用し、風切り音も25%減。実際に風切り音は、120km/h制限の高速道路での走行時を除いて、まったくといっていいほど聞こえません。運転席と3列目シートの乗員で会話しても、声を張ることなく余裕で話せたことに驚きました。
そしてもうひとつ、世界初採用となるのが独自技術の新しい「アクティブノイズコントロール」。これは音の発生源を、ノイズキャンセラーのような機能でコントロールするシステムで、エンジンノイズは60%減、ロードノイズは50%減を達成しているとのことです。
さらに運転支援技術では日産独自の「プロパイロット2.0」のほか、減速して停車する際に起こる「カックン」という不快な挙動をなくす「スムースストップ」も初採用。乗り心地性能の向上にも寄与しています。
このほか、エクステリアデザインは「The private MAGLEV」をコンセプトとした、モダンで独創的なもの。「MAGLEV」は日本語でリニアモーターカーを意味します。フロントグリルにはあえてメッキ加飾を使わず、日本の伝統工芸である「組子」をモチーフとした凝った造形となっています。
一方、インテリアのテーマは「特別なプライベートラウンジ」。シックでセンスのいいインパネや、天井のツインガラスルーフ、国内モデル初の14.3インチセンターディスプレイ、最大64色のアンビエントライト、3Dサラウンド再生が楽しめるBOSEの22スピーカープレミアムサウンドシステムなど、正真正銘のラグジュアリー要素が揃います。
どこまでも走りたくなる快適さ!
前述の通り、新型エルグランドでまず印象的だったのは静かさですが、これに100%モーター走行によるスムーズな加速フィールが合わさると、どこまでも走っていきたくなる気持ちよさが続き、大いに感心しました。
それもドライバーが気持ちいいだけでなく、2列目、3列目シートに座っても乗り心地がよく快適なところが、新型エルグランドが体現する「新時代のラグジュアリーミニバン」の世界観でしょう。
新型エルグランドには6種類のドライブモード(STANDARD、SPORT、COMFORT、ECO、PERSONAL、SNOW)が備わっていますが、これはパワートレインやステアリングを制御するだけでなく、IDS(インテリジェントダイナミックサスペンション)や、日産独自の電動四輪駆動システムである「e-4ORCE」も、それぞれのモードに応じた異なるセッティングに変える高度なものとなっています。
e-4ORCEは、前後2つの高出力モーターとブレーキを統合制御することで、加速時には車体フロントが持ち上がるのを抑制、減速時には逆に“前のめり”になるのを抑えるなど、どんなシーンでもフラットな乗り心地を実現させています。加えて、IDSの要(かなめ)のひとつである電子制御ショックアブソーバーは、100分の1秒単位での演算を繰り返しながら、車両の動きやドライバーの操作を検知。これらのシステムが連携することで、路面の凹凸、うねりなどに素早く対応しています。
特に、ドライブモードをSTANDARDからCOMFORTに変えた際、接地感がマイルドになったことがはっきりとわかるのには驚きました。
優れた乗り心地を実現するための工夫は、シートにもあります。日産独自の「ゼログラビティシート」は、自然な角度で胸部を支えるほか、骨盤の傾斜を抑え、首の筋肉をリラックスさせて快適な姿勢を保ちやすくするとのこと。また2列目シートには、中折れ機能やオットマンも装備されており、確かにラクな姿勢のまま快適に過ごすことができました。
2列目で唯一惜しいなと感じたのは、背もたれを倒すとアームレストまで連動して傾き、角度が上がったままになってしまうところでしょうか。
さらに新型エルグランドのシートは、後ろにいくほどヒップポイントが高くなる「シアターレイアウト」を採用しており、3列目シートに座っても、見晴らしの良さや広さが抜群です。3列目でも頭上や足元のゆとりはしっかりしていて、乗り心地も路面からの突き上げがほとんどありません。
座面の長さはもう少し欲しいところですが、これは使わない時に跳ね上げておく機構とのバランスの問題である様子。一方、跳ね上げ操作が片手でも軽々こなせるのには感心しました。
新型エルグランドは目新しさや見かけの豪華さだけでなく、これからの時代に求められる「ラグジュアリーさ」とは何かを考えたミニバンだと感じました。誰が運転しても、どの席に座っても、そしてどんなシーンでも、徹底的に快適で安心できるクルマにしたい。そんな日産の強い思いが伝わってくる1台でした。