矢村健、千葉のJ1復帰後初勝利を呼び込む先制弾! 市船育ちのFWが“慣れ親しんだフクアリ”で躍動「これを偶然にしないように」

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 17年ぶりのJ1復帰を果たしたものの、2026/27シーズンは開幕から5連敗。ジェフユナイテッド千葉にとって、ここまでの最大の課題は得点力不足に他ならなかった。

 開幕節のサンフレッチェ広島を皮切りに、FC町田ゼルビア、FC東京と3試合続けてノーゴール。天皇杯2回戦のアスルクラロ沼津戦では、最後の最後にロングスローから河野貴志が1点をもぎ取ったが、FW陣は沈黙したままだった。川崎フロンターレ戦では2列目右サイドの田中和樹が2ゴールをゲット。ようやくアタッカーに得点が生まれる。続くファジアーノ岡山戦で田中が今季3点目を奪ったが、白星がついてこなかったうえ、FWがノーゴールという状況も変わらなかった。

 そこで小林慶行監督はこれまでスタメン起用を続けてきた新戦力のエリソンをサブに回し、矢村健と石川大地を前線に2トップに配置。ガンバ大阪戦に勝負をかけた。開始20秒、その采配がいきなり結実する。右サイドから侵入した石尾陸登のクロスがDF陣の間を通って矢村に渡り、背番号29は思い切りのいい右足シュートを放った。これにはGK一森純も止められず、ゴールネットを揺らした。ようやく千葉のFWに今季初得点が生まれたのである。

「前半開始早々だったので、思い切って振ろうというのはありましたし、相手GKが取りにくいところやタイミングを意識するのは、自分なりに得意としている部分でもあるので合わせた感じです」と矢村は力を込める。絶大な存在感はこの一撃だけではなかった。前線から献身的にハードワークし、背後への抜け出しも積極的に披露。ガンバ守備陣に脅威を与え続けたのだ。

「勝てていない状況が続いていたので、本当に前半45分間は自分で結果を残しにいこうと。チームで勝ちに行こうという気持ちで僕はやっていましたし、スタートで出ている分にはゴールというところでチームの力になりたいと思っていました」と背番号29は持てる力の全てを注ぎ込んだことを明かす。

 凄まじい気迫が追加点を呼び込む。起点となったのは、矢村が佐々木翔悟からボールを奪ったシーン。そこからいいつなぎを見せ、杉山直宏のパスに背番号29が鋭く反応する。右ポケットを取り、マイナスのボールを供給。これを石川がシュートし、一森が弾いたところに津久井匠海が詰めて追加点をゲットした。

 この2点を守り切って、千葉は待ち望んでいたJ1復帰後初白星をついにもぎ取ったのだ。「僕らは本当に苦しい時間を過ごしましたけど、逆に言えばまだ始まったばかりの5試合で良かったかなと。この1勝はすごく大きいですけど、ここからどうしていくかの方がより重要ですね。運や日頃の取り組みだったり、いろんなことが噛み合って今日の結果になりましたけど、これを偶然にしないようにしないといけないと思います」と矢村は毅然と前を見据えていた。

 そういった発言をするのも、これまでの苦労のキャリアがあってこそ。1997年生まれの矢村は市立船橋高校から新潟医療福祉大学へ進み、中村俊輔を育てた佐熊裕和監督に師事。大きく成長して2020年にアルビレックス新潟入りを果たした。しかしながら、コンスタントな活躍が叶わず、2023年に期限付き移籍で藤枝MYFCへ赴いた。そこで現在横浜FCの指揮を執る須藤大輔監督と出会い、ストライカーとしてブレイク。2024年にはJ2リーグで16ゴールという目覚ましい成績を残し、新潟に復帰。本人も満を持して活躍に燃えていたが、主軸の座をつかみ取れずに再び藤枝に戻ることを決めた。J2・J3百年構想リーグでは、当初は藤枝のエースと目されたが、槙野智章監督の信頼を完全には勝ち取れず、不完全燃焼の半年間を過ごした。J1とJ2を行き来する選手という位置付けを払拭しきれなかったのだ。

 そんな自分を市船の大先輩に当たる千葉の大久保裕樹テクニカルダイレクターが千葉に呼んでくれたのだから、恩返しをしないわけにはいかない。「僕は後輩ですし(裕樹さんの)言うことは絶対なんで」と冗談交じりに笑ったが、高校時代を過ごした千葉の地で爪痕を残したいという野心を抱いているはずだ。「蘇我は船橋から少し離れているので、フクアリに来たのは高校選手権くらいしか覚えてないんですけど、こうやって千葉に戻ってきて自分の力を発揮できるのは僕自身嬉しいですし、慣れ親しんだ場所なので、もっと結果を残せるようにしたいですね」と目を輝かせる。

 この先もエリソンやレオナルド・ホシャ、石川、呉屋大翔、松村拓実らとのポジション争いを強いられ、ガンバ戦の1点が自身の立場を保証してくれるわけではない。本人もその厳しさを承知のうえで、さらなる高みを追い求めていく構えだ。

「その競争という部分は、僕の中ではあまり考えないようにしています。いろいろな情報があると弱気になる部分が出てしまうので。1枠2枠を争う環境は厳しいですけど、ストライカーとしては、やっぱりゴールという結果ですね。今、こうして切磋琢磨できる関係性はすごくいいですし、その中でやるのがプロ。自分は遠慮せずにやっていきます」。紆余曲折のキャリアを歩んできた苦労人・矢村は千葉で大成功できるのか。本当の勝負はここからだ。

取材・文=元川悦子

【ハイライト動画】矢村健が躍動!ジェフユナイテッド千葉vsガンバ大阪