【カイロ時事】米イランの軍事衝突により原油輸送の要衝ホルムズ海峡が事実上封鎖され、エネルギー供給への懸念が高まる中、新たな迂回(うかい)路としてシリアが注目を集めている。シャラア暫定政権の国際社会復帰を後押しするトランプ米政権は、シリアとイラクを結ぶパイプライン計画を支持。ただ、輸送ルート周辺の治安が課題となっている。
米紙ワシントン・ポストなどによると、イラク南部の製油所から地中海沿岸のシリア西部バニヤスを1日数千台規模のタンクローリーでつなぐ石油輸送ルートが今年4月から試験的に稼働。イスラエルの研究機関は、輸送が当初予定された期限を越えて続いたと指摘する。
イラクとシリアの間には、北部キルクークからバニヤスを結ぶパイプラインが存在するが、イラク戦争中に損傷した。両政府は今年7月、パイプライン修復に関する協定に署名。米石油大手シェブロンが投資会社などと企業連合を立ち上げ、修復事業の調査を進めると報じられた。
米国務省は「トランプ大統領のビジョンとリーダーシップによって可能となった、繁栄を通じた安全保障と安定の促進につながる」と事業計画を歓迎。このほかに新たなパイプラインの敷設も取り沙汰されている。いずれも事業完了には数年かかるとみられる。
ただ、シリアでは暫定政権と少数派の衝突が起きるなど、治安が安定したとは言えず、先行きには不透明さが残る。ルートがあるイラク西部は親イラン武装組織の影響下にあり、妨害の可能性もある。
シリア内務省は7月16日、ルートを走るタンクローリーからミサイルを含む武器が発見されたと発表した。イラクの親イラン組織から、レバノンの親イラン・イスラム教シーア派組織ヒズボラに送られる途中だったもようだ。石油輸送ルートが密輸に使われ、地域不安定化の新たな火種になりかねない側面も浮かび上がった。
〔写真説明〕イラクから軽油を運んできたタンクローリーの車列=4月15日、シリア西部バニヤス付近(AFP時事)