なぜ、デリバリー配達員は「原付二種」に乗るのか? “50cc原チャリ”が街から姿を消しつつある裏事情

好業績迎える日本の尖った業界

いまや街のあちこちで見かける、四角いバッグを背負ったデリバリーバイク。この10年で、日本の二輪シーンは大きく様変わりしました。その裏で何が起きていたのか、追いかけてみます。

原付一種を上回る原付二種の拡大ぶり その裏にある“事情”

 今から10年前の2016年9月29日、Uber Eatsが東京の渋谷・恵比寿、青山・赤坂、六本木・麻布エリアで、約150店のレストランパートナーとともにサービスをスタートしました。2021年9月には全国47都道府県へ範囲を広げ、いまや都市部では四角いバッグを背負った配達員が走り回るのが日常の光景となっています。

 こうした即時配達で使われる車両のひとつが、総排気量50cc超125cc以下の「原付二種」と呼ばれるバイクです。

 かつて国内二輪市場の大きな部分を占めたのは、50cc以下の「原付一種」、いわゆる“原チャリ”と呼ばれるモデルでした。しかしホンダの2018年度の国内出荷実績では、原付一種は6万8989台。それに対し、原付二種は7万41台と、出荷台数が逆転しています。

 市場全体でも同じ傾向が見られます。日本自動車工業会(自工会)によると、2025年の国内二輪車の登録・出荷台数は前年比1.6%減の36万1990台。このうち原付二種は10万8287台で、原付一種の10万7454台をわずかながら上回りました。

 原付一種が縮小した背景には、厳しくなる排出ガス規制に対応しつつ、小排気量車を安く造り続ける難しさがありました。一方、原付二種は、速度指定のない一般道の法定最高速度は時速60kmです。加えて、原付一種の時速30km制限や二段階右折といったルールの対象ではありません。この違いから原付二種は、通勤や配達など都市内を走る用途でも使いやすい車両の区分と見られています。

 フードデリバリーの普及で、原付二種を仕事に使う光景は都市部でよく見られるようになっています。ただし、その需要が市場拡大にどの程度影響しているのかを示す公的統計やメーカー統計は確認できません。市場の変化には、排出ガス規制への対応や車両特性など、複数の要因が重なっていると考えられます。

若者とバイクの接点に? 統計で見えること、見えないこと

 街の風景が変わるなかで、課題も見えてきました。厚生労働省は、2019年に飲食店で起きた休業4日以上の労働災害のうち、デリバリー中の交通事故とみられる114件を分析。その結果、原動機付自転車による事故が多数を占めていました。そして、被災者の年齢は20〜29歳が43%を占め、29歳以下で括ると60%にもなります。

 資料では事故事例として、交差点での出会い頭や夜間や雨天時のスリップ、急ブレーキによる転倒、スマホのながら運転による操作ミスなどが挙げられました。これを受けて、交通ルールの順守や運行前点検が呼びかけられています。

 事故で被災した人のうち、若い世代の割合が高かったデータが出ているのが現状です。ただし、配達員全体の年齢構成や、配達のために免許を取ったり車両を買ったりした人の割合を示す統計は確認できません。デリバリーが若者とバイクの新たな接点になっている可能性はありますが、断定するには配達員や販売店への詳細な調査が必要でしょう。

 免許制度も動きました。2018年の道路交通法施行規則改正により、普通自動車免許などを持つ人が「AT小型限定普通二輪免許」を取得する場合、教習課程を最短2日間で修了できるようになりました。ですが対応する日程は教習所ごとに異なり、“免許証の交付まで2日で終わる”というわけではありません。

 原付をめぐっては、デリバリーの普及とは別に、大きな制度変更がありました。2025年4月から、総排気量50cc超125cc以下で最高出力を4.0kW以下に制限した「新基準原付」を、原付免許で運転できるようになったのです。

 背景には、2025年11月以降の排出ガス規制に従来型50cc車を適合させるのは技術面でも事業性でも難しい、というメーカー側の見通しがあります。

 ただ、注意したいのは、新基準原付が原付二種ではなく、法令上原付一種と見なされる点です。法定最高速度は時速30km、一定の交差点では二段階右折が必須であり、二人乗り禁止といった、従来の原付一種と同じルールが適用されます。なお自工会によると、旧来の「原付一種」は2025年10月末で生産を終えているとのことです。

 フードデリバリーの普及は、二輪車が日常の足であるだけでなく、都市の物流を担う「仕事の道具」でもあることを可視化しました。街のデリバリーバイクは、縮小した50cc原付、存在感を保つ原付二種、新基準原付の登場という市場の変化を映す存在でもあったのです。