現場待望! 陸自初の「装甲救急車」ついに導入へ! ベテラン「82式」の後継と一緒に要求へ どんな形?

好業績迎える日本の尖った業界

防衛省の2027年度概算要求に、陸上自衛隊の新型車両「装輪装甲車(指揮通信型/患者輸送型)AMV」が計上されました。40年ぶりの指揮通信車の更新と、陸自初となる待望の「装甲救急車」導入の背景を解説します。

82式指揮通信車の後継「装輪装甲車(指揮通信型)AMV」

 AI(人工知能)や無人アセット、スタンド・オフ防衛能力に関する事業に話題が集まる防衛省の令和9(2027)年度概算要求ですが、従来領域に関する装備品では、陸上自衛隊の新たな装甲車両として、「装輪装甲車(指揮通信型)AMV」および「装輪装甲車(患者輸送型)AMV」の2車種が初めて計上されました。実は、これらは陸上自衛隊にとって長らく導入が待たれていた装甲車両です。

 2027年度概算要求に新たに計上された「装輪装甲車(指揮通信型)AMV」および「装輪装甲車(患者輸送型)AMV」は、その名が示すように、96式装輪装甲車の後継として導入された装輪装甲車(人員輸送型)AMVの派生型です。

 そもそもAMVは、フィンランドのパトリア社が開発した8輪駆動の装輪装甲車で、現在は北海道にある日本製鋼所・室蘭製作所でライセンス生産されています。

そして、装輪装甲車(指揮通信型)は、既存の82式指揮通信車の後継として導入を進めるものになります。

 82式指揮通信車は、6輪駆動の装輪装甲車で、全長5.72m、全幅2.48m、全高2.38m、戦闘重量は13.6tで、乗員数は8名。1983年から主に師団・旅団の司令部、普通科連隊や特科連隊の本部などに配備されています。なお、調達台数は1982年度から1999年度までで計231両です。

 82式指揮通信車は、陸上自衛隊で初めて実用化された国産の装輪装甲車として一時代を築きました。しかし、1970年代に導入が計画された当時と比べ、指揮通信要員が扱う情報量が飛躍的に増大する一方で、近年では車内容量の不足が顕在化しており、新たなC4I(指揮、統制、通信、コンピュータ、情報)機能に対応することが困難な状況になっていました。

 今回予算計上された装輪装甲車(指揮通信型)ですが、実はすでに試験評価用に導入されたと思われる車両が今年(2026年)6月の富士総合火力演習に登場しています。その外観は、車体後部のキャビン部分が一段高くなっており、車体上面には82式指揮通信車より2本多い6本の通信アンテナが設置されていました。

 このように8輪駆動で全長7.7m、全幅2.8mと82式指揮通信車より一回り大きい車体と、強化された指揮通信機能は、部隊の指揮統制能力を大きく向上させるものと見られています。

ついに予算要求となった陸上自衛隊初の装甲救急車

 一方、「装輪装甲車(患者輸送型)AMV」は、陸上自衛隊にとって初めての車種となります。

 諸外国の装輪装甲車では、アメリカ陸軍のM1133「ストライカー」やドイツ陸軍の「フクス」などに装甲救急車型が存在しますが、陸上自衛隊はこれまで装甲救急車を保有していません。

 ちなみに、野戦救急車まで広げると、1 1/2tトラック(73式中型トラック)の後部に完全密閉式キャビンを搭載した「1トン半救急車」を保有していますが、ボディは非装甲素材であり、とうぜんながら防御能力は「ない」に等しいです。

 そのため、自衛隊の海外派遣が増えたことなどを背景に、2010年代より装甲救急車の導入に向けた模索が続けられてきました。その間、部隊では既存の73式装甲車や96式装輪装甲車の車体に赤十字を描き、車内にはパイプフレームで担架用のステーを設けるなどの改修を施し、最前線での救命搬送に関する訓練が行われていました。

 陸上自衛隊にとって待望の「装輪装甲車(患者輸送型)AMV」は、「装輪装甲車(指揮通信型)AMV」とともにパトリアAMVのハイルーフ仕様のAMV SP(System Platform)が使われますが、基本型である装輪装甲車(人員輸送型)と同様に、日本製鋼所でライセンス生産されます。

 令和9年度概算要求には、装輪装甲車(指揮通信型)AMVと装輪装甲車(患者輸送型)AMVが各3両+事項要求分計上されていますが、同年度の契約分については、令和11年度から12年度にかけて陸上自衛隊に順次納入される計画となっています。

 ただし、いかに高い防御性能を持つ装輪装甲車といえども、ロシア・ウクライナ戦争を機に多用されるようになった無人機(ドローン)による攻撃の前には、無傷ではいられません。

 したがって導入後には、いかに生残性を向上させるか、不断の調査・研究が必要になるのは間違いないでしょう。