国内の新規株式公開(IPO)数の減少が目立っている。これまでけん引してきたソフトウエア関連企業の上場ペースが減速。今年は中東情勢の悪化による金融市場の混乱に加え、最先端の人工知能(AI)の台頭による業務代替の懸念が拡大。金利の上昇もあり、企業の間でIPOの時期を延期する動きが出ている。
東京証券取引所によると、「プライム」「グロース」「スタンダード」の主要3市場の今年1~6月のIPO数は17社と、前年同期から3割減った。年単位で見ても、コロナ禍を受けた世界的な金融緩和で資金調達環境が好転した2021年(123社)をピークに低調となっている。
特に上場企業数が多い、新興・成長企業向けのグロース市場は25年以降、急ブレーキがかかった。代表的な株価指数である「東証グロース市場250指数」は、前身のマザーズ時代を含めて22年以降、低迷。24年8月には485ポイントに落ち込むなど、IPOの環境は良くない。
東証が新興企業の上場後の成長を重視し、グロース市場の上場維持基準を「上場5年経過後に時価総額100億円」に厳格化することを決めた影響も大きい。基準のハードルは高く、グロースからスタンダードに市場区分を変更する企業も増加している。
今年は米新興アンソロピックのAIサービスの登場で、AIによる業務代替を懸念する「アンソロピックショック」が起きた。中東情勢の悪化に伴う世界的な金利上昇も重なり、上半期のグロースへの上場は11社と前年同期比4割減少した。
同市場はクラウド上で業務効率化などのソフトを提供する「ソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS)」関連の企業の上場が多い。SMBC日興証券の斉藤宗一郎氏は「SaaS系企業はIPO時期の延期という判断をするケースが増えている」と指摘する。
今後のIPO動向では、自動運転や宇宙、半導体など高市政権の成長投資・危機管理投資による政策的な後押しが期待できる企業は有望視される。今年も自動運転のティアフォーなどの大型上場があり、技術革新を通じて社会課題の解決を目指す「ディープテック」関連企業への市場の関心は強い。斉藤氏は「IPOの相談が減っているということはない」と述べた。